政府サイトやマスメディアのWEB記事も容易に消える日本
ページが政府のドメイン(go.jp)の場合でも掲載期間が終了することが容易にあります。その場合は国立国会図書館のインターネット資料保存プロジェクトであるWARPでURL等を入れて検索すればヒットするはずです。
残念ながら、日本では大手マスメディアのWEB記事も削除されるケースがよくあります。記事そのものの削除が無くとも、タイトル変更は日常茶飯事で、本文の変更であってもその旨の注意表記が為されることは皆無です。(その一例 ニ例 三例)
記事単体ではなく大規模なドメイン移管や掲載場所の変更が行われた例があります。産経新聞のWEB記事は2016年まではMSN産経ニュースで掲載していたものが、同サイト閉鎖に伴い産経新聞単独のサイトで掲載するようになりました。その影響でMSN時代の記事URL先に遷移しても記事が表示されません。
最近では共同通信のように”thiskijiis”から”nordot”にドメイン移管されたせいで、過去記事を確認することが困難なケースも出てきました。朝日新聞の「WEBRONZA(論座)」のように新記事の更新を終了したことで論者からの掲載辞退の申し出を受け付ける所もあります。
もっと言えば、世の商業WEB媒体には無料公開されていたものですらログインしなければ見れなくなったものがあります。仮にそういう媒体のURLが含まれていた場合、読者による(作者ですら)追検証が不可能になってしまうということになります。Yahooのジオシティのように、ブログサービス自体が閉鎖されることもあります。
『「やさしさ」の免罪符』ではここで挙げたような変更は影響してないと思われますが、もはや「そういうことを避けるために紙媒体のみ参照するべきだ」と言うことができない状況になっています。なぜなら、紙媒体では存在しないWEB媒体の記事によって読者を煽動するメディアが現実に存在しているからです。それは運営者の規模の大小は関係ありません。
本書は、そうした「動き」をも捕捉し得るものとして機能させるべきだと、勝手ながら私は考えています。それは後述するように、林氏のフィールドワークを無駄にしないためにもなると思っています。
『「やさしさ」の免罪符』を支える林氏のSNSフィールドワーク『「やさしさ」の免罪符』に記載されている内容については、私は林氏のTwitter(X)のアカウントをフォローしていたので、彼のTwitter(X)上のフィールドワークの一部をリアルタイムで見てきました。本書は、その成果が大きく反映されていると証言できます。
他の人からはどう見えていたかはわかりませんが、ここ数年の間だけでも、日本や福島を貶める非科学的で無根拠な主張をするアカウントに対して林氏が反論を試みている場面が何度もありました。
それは単に「破綻した主張をしている者を取り上げて論破」などという枠に留まるものではなく、彼のそれは風評加害者への反撃であると同時に資料収集でもあり、更には記録化でもあったのだと言えます。
単なる反論を超えた、言論空間全体の中の特定の「動き」を把握するための作業、傾向の分析、言語化の試みとその精緻化の実践…
その集大成が本書であり、脚注とそのリンク先を見ることで、本書がどのような背景となる現実を捉えてきた結果なのかを垣間見ることができるでしょう。