ハラリ氏はその情報管理の歴史的動向をまとめている。同氏は「社会の安定性を保つために情報の流れをどう管理するかが重要だ」と主張する一方、「民主主義社会では、自由な情報の流れが真実を育む一方で混乱を招く可能性があり、独裁的な体制では情報を抑圧することで秩序を保ちながらも真実が損なわれる」と指摘している。そして人類の近未来、人工知能(AI)がさらに強力になるにつれて、「新たな神話を作り出し、人間の信念を操作する力を持つ可能性があり、自由意志やリベラルな民主主義の存続に対する懸念がある」と提起している。

ちなみに、「Nexus」という言葉は、ラテン語を起源とし、「つながり」「結びつき」「連結」などを意味する。現代では、ネットワークやシステムにおける中心的な結びつきや接続点を指す際にもよく使われる。この言葉は、物理的、社会的、または概念的な要素が絡み合い、相互に影響し合う関係を強調する際に用いられることが多い。

ハラリ氏はドイツのフランクフルト・ブックフェアでオーストリア国営放送とのインタビューに応じ、AIと通常の科学技術の相違について、「例えば、核兵器は道具だが、AIは自己決定能力を有している。現在のAIはまだ初歩的だが、人類の未来はAI抜きでは考えられない」と強調する一方、「極めて少数の人間が現在AIを管理しているが、彼らは会社の利益を最優先するから、AIがもたらす危険性などにはあまり配慮しない」と語る。

ところで、AIが登場し、急速にその能力が発展してきた今日、こんどはAIが人類の近未来で情報統治者となって、人類を管理していくのではないか、といった新たな懸念がでてきたわけだ。ハラリ氏はAIの能力が人類に貢献すると評価する一方、AIが情報操作を通じて人間の自由意志や民主主義を侵食し、最終的に人間の能力を超える存在になる可能性を強く警告している。この見解は、多くの技術専門家や哲学者の間でも共有されており、AIがもたらすリスクには、人間の認知バイアスを悪用した操作や監視社会の強化、さらにAIによる独裁的な権力構造の強化などが考えられている。