そこで、あらためて今回の状況を招いた責任は誰にあるのか考えみたい。

まず、自民党の支持者を増やすようになるはずが逆目になったのは、総裁選挙の制度が九人もの候補者が出ることを予定していなかったことだ。このために、9人のなかでもいちばん右寄りの高市氏と左寄りの石破氏という議員たちの支持がほとんどない2人の候補者だけが決選投票に残ってしまったことだ。

これではどちらが当選しても融和は難しい。また、必然的にどちらが勝ってももともとの極端な政策を支持している議員はごくわずかなのだから、「変節」せざるを得ない。

石破氏が変節したと批判されているが、もとの奇抜な政策などは最終投票で石破氏に投票した議員のごくわずかしか支持していなかったのだから、「変節」するのは不適切でもなんでもない。これは高市氏が当選していても同じことだ。

しかし、そんな難しい説明を国民は理解しないからおかしくなった。

次に、高市氏が敗戦を素直に受け入れ、総選挙を前に石破総裁を先頭に一緒に戦おうという姿勢でなかったのは間違っていた。今回の総裁選挙は正々堂々たるもので、結果に疑義を呈するような要素は何もなかった。まして、すぐに総選挙なのだから、党内野党の色を明確にするのは間違っている。

しかし、高市氏は幹事長以外は受けないとかいって総務会長の椅子を蹴った。だが、次点の候補者を幹事長にするなどという習慣などないのだから、これはおかしい。正しくは、総務会長を受ける代わりに公平で党内融和を実現する人事を条件にすべきだった。

そして、この総務会長を蹴ったことは、石破首相に人事について白紙委任状を渡すことになったのだが、石破氏はしめたとばかりに、清和会からの入閣ゼロとか、村上誠一郎総務相など、安倍体制での冷や飯組を集めて、また、能力的にも問題で、人気も出そうもないおんぼろ内閣にしてしまった。

高市氏も石破氏も人事に強い訳でないので、側近たちに押されてしまったというべきだ。