またこれらのグループに属していた参加者は「他の人も私と同じ判断を下すだろう」と答えていました。
一方でグループ3の参加者は適切な判断を下すのに迷っており、合併賛成派が55%、反対派が45%とほぼ半数ずつとなっています。
この結果から、情報を断片的にしか持っていない場合の方が「適切な判断を下せる」と思い込みやすくなる認知バイアスが働くことが示唆されました。
では、どうしてこのような認知バイアスが起こってしまうのでしょうか?
知れば知るほど、自分が知らないことに気づく
「適切な判断を下すために必要な情報が足りていないにも関わらず、重要な事実はすべて知っていると思い込み、自信に満ちた判断を下してしまう」
この心理現象を研究チームは独自に「情報十分性の錯覚(illusion of information adequacy)」と呼んでいます。
要するに、ある問題に関する情報を半分しか持っていないのに「自分が正しい判断をするのにはこの情報だけで十分だ」と錯覚してしまうのです。
その理由について研究者は「私たちの脳には知っていることが少なければ少ないほど、知るべきことはすべて知っていると思い込む傾向がある」ことを指摘します。
これは心理学用語で「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれ、自分の知識や能力が不足しているにも関わらず、過大に評価してしまう心理現象です。
ダニング=クルーガー効果は自身の思考や判断などを客観的に把握するための「メタ認知能力」が不足することが原因で起こるとされています。
ある問題についての知識や情報が不足していると、自分の意見が他と比べてどう違うのか、それを踏まえて自分の意見は正しいのか間違っているのかといった客観的な判断が難しくなり、自分の意見を過大評価しやすくなるのです。
逆にダニング=クルーガー効果では、知識や能力が高まれば高まるほど、メタ認知能力も高まるため、「自分はまだまだ何も知らない」「学ぶべきことが山ほどある」と思い込むようになります。