より具体的に言えば、私たちは全体の客観的な事実把握を欠いたまま、断片的な情報だけをもとに判断を下してしまう認知バイアスを持っているのではないか、と考えたのです。
この真偽を確かめるため、チームはアメリカ在住の1261名(平均年齢39歳、教育レベルの中央値は大学3年生)を対象に実験を行いました。
実験ではまず、参加者全員に「私たちの学校の水が消えていく(Our School Water is Disappearing)」というタイトルの架空の記事を読んでもらいます。
この記事は、学校周辺の地域の帯水層が枯渇しているため、水が豊富にある近隣の学校と合併するべきか、それとも他の解決策を模索して合併せずにおくべきかの問題を扱った内容です。
そしてチームは参加者を次の3つのグループに分けました。
グループ1には「その学校が水を豊富に供給できる近隣の学校と合併すべきである」という合併賛成派の意見を述べた別の記事を読んでもらいます。
グループ2には「その学校は他の学校と合併せずに、別の解決策を選択するべきである」という合併反対派の意見を述べた記事を読んでもらいます。
グループ3には合併賛成派と合併反対派の両方の記事を読んでもらいます。
その後に参加者は学校を合併すべきか、そのままにしておくかについて自説を述べるよう要請されました。
その結果、興味深いことに、グループ1とグループ2の意見の一側面だけを読んだ参加者は、グループ3の両方の意見を読んだ参加者に比べて、自分たちが何をすべきかについて適切な判断を下すのに十分な情報を持っていると信じやすいことがわかったのです。
そしてグループ1とグループ2の参加者のほとんどは、それぞれが読んだ記事の内容に沿う決断を下していました。
つまりはグループ1の合併賛成派の記事を読むと「学校は近隣の学校と合併すべきである」と答え、グループ2の合併反対派の記事を読むと「合併にはデメリットが多いので他の解決策を取るべきである」との答えに傾いていたのです。