ライセート試薬の誕生から1990年代まで、その生産工程は持続可能なものと考えられていました。
個体数調査でも、カブトガニはありあまるほど存在し、生物学者や保護活動家も、この種の保護にあまり重きを置いていなかったのです。
ところが、2000年に入り、カブトガニの個体数が明確に減っていることが明らかになってきました。
1990年には、大西洋岸にて毎年、約124万匹のアメリカカブトガニが産卵していると推計されていたのですが、2002年以降、その数は約33万匹まで減少していたのです。
また、2010年の研究では、採血後のカブトガニのおよそ30%が死んでいるという結果が出ました。
これは当初の予想値の約10倍です。
さらに、温暖化や生息地の減少、乱獲により、カブトガニの数はどんどん減っており、ついにはアメリカやアジアで「絶滅懸念種」に指定され始めています。
こうあっては、今まで通り、カブトガニを採取して、血を抜き続けるわけにはいきません。
そこで期待されているのが、ライセート試薬に代わる人工的な化学物質の開発です。
2016年には、同じ機能を持つ合成物質「リコンビナントC因子(rFC)」が開発され、アメリカのいくつかの製薬会社が使用し始めました。
ところが、2020年の調査で、「リコンビナントC因子の安全性が証明できない」として、ライセート試薬の代替品とはならないと判断されています。
今現在は、まだカブトガニの血に頼る他ありませんが、彼らを絶滅させてしまう前に、代替薬の開発を急がなければなりません。
※この記事は2022年8月に掲載したものを再掲載しています。