カブトガニは約4億5000万年前に出現してから、その姿をほとんど変えておらず、「生きた化石」と呼ばれています。

日本では古くから瀬戸内海によく見られましたが、取り立てて役に立つわけでもなく、大きくて堅い体が漁の網を破るため、地元民にはかなり嫌われたようです。

しかし現代の医療分野では、カブトガニの血が非常に重宝されているのはご存知でしょうか?

カブトガニの血液は、赤色ではなく、淡い青色をしており、ある特殊な能力で、私たちの健康を守るのに役立っているのです。

それはどんな能力なのか?

まずは、カブトガニの血が青い理由から紐解いていきましょう。

目次

  • カブトガニの血が青い理由とは?
  • 内毒素を検出できる唯一の天然資源
  • カブトガニの血に代わる試薬は作れるのか?

カブトガニの血が青い理由とは?

アメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)は、毎年春になると、何十万匹もが産卵のためにアメリカ東海岸の砂浜へと上陸します。

メスは、約5000個の小さな卵が集まってできたゴルフボール大の卵塊を砂浜に産み落とし、そこへ一緒にやってきたオスが精子を吹きかけて、受精させます。

これらの卵には腹を空かせた渡り鳥たちがよく群がりますが、一方で、製薬会社の面々は「青い血」を得るために、砂浜に上がったカブトガニを採取します。

アメリカ大西洋岸にあるデラウェア湾の砂浜に上がってきたカブトガニたち
アメリカ大西洋岸にあるデラウェア湾の砂浜に上がってきたカブトガニたち / Credit: phys – Horseshoe crabs: ‘Living fossils’ vital for vaccine safety(2022)

アメリカでは、毎年およそ50万匹のカブトガニが採取され、施設内に運び、心臓付近の血管から血を抜いたのち、海に返します。

その血の色は、ご覧の通り、淡い青色です。

血が赤くないというのは、とてつもなく奇妙に感じてしまいますが、なぜカブトガニの血は青いのでしょうか?

施設内でカブトガニの血を採取する様子
施設内でカブトガニの血を採取する様子 / Credit: Business Insider – Why Horseshoe Crab Blood Is So Expensive | So Expensive(youtube, 2018)