皆さんは過去に、お葬式や人に怒られている最中など、笑ってはいけない場面で笑いがこみ上げてきた経験はないでしょうか?
お笑いのコントでよく見かけるシチュエーションですが、実際私たちはその様な場合にきちんと我慢することができます。
これは「シリアスな場面で笑うのは社会的におかしい」ことを私たちが理解しており、「自分の感情について考え、判断を下す能力」を持っているためです。
米ノースイースタン大学(Northeastern University)は、この場にそぐわない不適切な態度を制御しているとみられる脳領域を特定したと発表しています。
では、その脳領域が損傷するとどうなるのでしょうか?
研究チームは、その唯一の症例かもしれないある人物の数奇な生涯に触れています。
研究の詳細は2022年3月26日付で学術誌『Social Cognitive and Affective Neuroscience』に掲載されました。
目次
- 鉄の棒が頭を貫通して性格が激変してしまった男性
- 前頭前野の損傷で「感情の判断」ができなくなる
鉄の棒が頭を貫通して性格が激変してしまった男性
1848年9月、アメリカの鉄道建築技術者の職長だったフィニアス・ゲージ(Phineas Gage、1823〜1860)は、路盤を建設するための発破作業をしていました。
岩に深く穴を掘り、火薬・ヒューズ・砂を入れて、鉄の棒で突き固めるという作業です。
ところが砂を入れてなかったためか、突き棒が岩にぶつかって火花を発し、火薬が爆発しました。
その瞬間、長さ43インチ(約109センチ)の鉄の棒がゲージの左頬を貫通し、脳を通って頭蓋骨の上部から突き抜けていったのです。