ザトウクジラは毎年7月から11月にかけてトンガを含む南太平洋の暖かい海域に移動し、そこで交尾と出産をするため、ザトウクジラの群れを見かけること自体は珍しくありません。
しかし全身真っ白のクジラを目撃できるケースは極めて稀です。
アレン氏は「彼女の肌は水中でとても明るく輝いており、まるで夜空の満月を見ているようでした」といいます。
そこで彼らは純白のザトウクジラをトンガ語で「月」を意味する「マヒナ(Mãhina)」と名付けました。
またアレン氏らは水中に潜って、クジラたちと一緒に遊泳することにも成功しました。
調査に参加していたマット・ポーティアス(Matt Porteous)氏はそのときの様子について、「(アレン氏が)母親のザトウクジたの動きをミラーリング(鏡写しのように模倣)することで、信頼を得ることができたようでした」と話します。
同氏は続けて「母クジラは(アレン氏の)穏やかな動きに心を許したのか、ゆったりと我が子をヒレで水面に持ち上げて、マヒナと私たちが自由に触れ合うことを許してくれました」と続けています。
そして同氏はマヒナについて「彼女の輝く純白の体は、母親に守られながら青い海の中を優雅に泳ぎ、その姿はまるで生きる伝説、あるいは海の天使のようでした」と評しています。
では、マヒナはなぜ普通のザトウクジラと違い、真っ白な体になったのでしょうか?
「アルビノ」ではなく「リューシズム」と見られる
白いペンギン、白いトラ、白いワニ、白いクジャクなどなど。
自然界では通常個体と違って、全身が真っ白になった個体があらゆる動物種でたびたび見かけられています。
このように全身が真っ白になる現象として知られるのが「アルビニズム(白化現象)」です。
アルビニズムを起こした個体は「アルビノ」と呼ばれます。
アルビニズムとは具体的に、体のメラニン(色素)を作り出す遺伝子が欠損していることで、全身のメラニンが生まれつき欠乏してしまう症状を指します。