一つ目が、「平氏は、日宋貿易により巨万の富を得た」という点です。
二つ目は、宋から輸入した物として、「銅銭」が挙げられていたことです。現代で言えば、「日本が米国から米ドルを輸入する」というような奇妙な話です。
「通貨発行益(シニョリッジ)」こそが平氏の富の源泉だった!ここからは、私の推測です。
平氏は、宋から輸入した銅銭を通貨として人々に使わせた(まずは、部下への給与として使った)が、その際、宋で用いられている価値とは異なる価値で使わせた。 宋での価値と日本での価値の差分を、平氏がサヤを抜く形で利益を得ていた。例えば、平氏が米1俵を宋に輸出すると銅銭1枚を入手できたとしましょう。その銅銭を日本で「銅銭1枚には米5俵の価値がある」と言って日本国内で人々に使わせれば、平氏は、米4俵分の利益を得ることができます。
つまり、平氏は、宋から持った銅銭を人々に流通させて「通貨発行益(シニョリッジ)」を得た。これこそが平氏の富の源泉だった、というのが、私の推測です。
中国の当時の状況からは、平氏が「(シニョリッジ)」を得ていたと思える!この推測を裏付ける状況証拠もあります。
当時の中国では、銅の精錬のために石炭(中国北部で産出していた)を用いていたが、満州系の金王朝との戦いに敗れ中国北部の領土を失ったため、石炭の入手が困難になりました。 これにより、南宋では、銅鉱石から銅を精錬するためのコストが著しく上昇し、銅鉱石から銅を精錬するより、銅銭を潰して銅を得る方が割安になってしまいました。 そのため、銅銭を潰して銅を得る行為が頻発、南宋の政府は、銅銭を潰して銅を得る行為を厳しく処罰していました。つまり、南宋王朝は、貨幣を発行することにより「通貨発行益」を得るどころか、「通貨発行損」を重ねていたのです。