1. 日本版フェアユース導入

    日本でも2016年から「知的財推進計画」の提案を受けて、日本版フェアユースが検討されてきた。下図のとおり、米国のフェアユース規定が権利制限規定の最初に登場するのと異なり、日本版フェアユースは権利制限規定の最後に受け皿規定を置く案。具体的には「利用行為の性質、態様」について、「以上の他、やむを得ないと認める場合は許諾なしの利用を認める」という規定を設けるものであった。

    権利制限の柔軟性の選択肢

    この規定の導入を検討した末、二度にわたる著作権法改正が行われたが、二度目の2018年改正でやっと実現したのが、一番右の「著作物の表現を享受しない利用」。これによって、AIに著作物を読み込ませることは可能になったが、人が著作物の表現を享受するような利用まではカバーしないため、パロディなども未だに認められていない。

    「国破れて著作権法あり」の巻末特別インタビューで、壇氏は刑事にこそフェアユースが必要と指摘している。

    以下、米国にも著作権法に刑事罰はあるが、刑事事件にまで発展しない理由についてのやりとりの中から抜粋する。

    城所:それと、フェアユースが大きいですよね。民事でフェアユースが成立するかもしれないような事件に、民事より立証責任のハードルが高い刑事で勝てる見込みは少ないですから。

    壇:それはあると思います。フェアユースが一番効果的なのは、実は刑事なんですよね。民事も、フェアユースの有り無しで有利・不利がありますけども、刑事事件の場合はフェアユースで無罪を取られたら困ると、起訴を断念することが増えると思うので、一番効果的なのは、多分、刑事の分野かなとは思いますけどね。