このような委員構成では、権利を強化する改正は通しやすいが、権利を制限するような改正は難しくなる。具体例を「国破れて著作権法あり」の「あとがき」から抜粋する。

インターネットというたった一つの技術革新にうまく対応できないことが日本経済の停滞を招いている。その原因の一つに日本の厳しい著作権法があげられる。本文でも紹介した学者やネットビジネスの先人たちが指摘するように複製が前提のインターネットで、複製には許諾が必要な原則を貫こうとしている。

インターネットで著作物を公衆向けに送信する権利、「公衆送信権」を世界ではじめて導入したのも日本である。当時、文化庁は「世界最先端を維持した日本の著作権法」(コピライト 1997年7月号)と鼻高々だった。

著作権法は著作権の保護と著作物の公正な利用をバランスさせて、文化の発展に寄与することを目的としているが、こうした保護に軸足が置かれた日本の著作権法がネット時代に乗り遅れた一因ともいえる。

3. 取調べに弁護士の立会いを義務づける

金子氏は検察の作文した虚偽の自白に署名させられたとが、その後の起訴、一審での有罪判決へと続く悲劇の始まりとなった。壇氏が「自分の納得のいかない調書に署名しないように」とアドバイスする前だった(「金子勇との7年半」より)。

取調べへの弁護人の立会いは、欧米はもとよりアジアでも韓国、台湾でも認められていて、これを認めない日本の刑事司法に対しては国際的にも批判が絶えない。2013年の国連拷問禁止委員会では、アフリカの委員に取調べに弁護人の立会いが認められない「日本の刑事司法は中世」と指摘された。

2018年に発覚したカルロス・ゴーン元日産自動車会長の不正行為をめぐる事件では、ゴーン夫人も日本のいわゆる「人質司法」を批判した。2019年1月17日付ITmedia 「ビジネスオンライン『ゴーン妻の“人質司法”批判を「ざまあみろ』と笑っていられない理由」は以下のようじ報じた。

キャロル夫人が国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)に、9ページにわたる書簡を送ったことが明らかになった。夫人は書簡で、「日本の刑事司法制度がゴーンに課している厳しい扱いと、人権に関わる不平等さを白日の下にさらす」ことをHRWに求めている。

(中略)

またキャロル夫人の書簡にはこんな記述もあるという。「毎日何時間も、検察官は弁護士が立ち会わない中で、なんとか自供を引き出すために、彼を取り調べし、脅し、説教し、叱責(しっせき)している」

日本弁護士連合会も2019年に、「弁護人の援助を受ける権利の確立を求める宣言-取調べへの立会いが刑事司法を変える」を発表している(日本弁護士連合会ホームページより)。