ラピダス北海道工場の経済波及効果
一方、1000年に1度のビッグチャンス到来とされるラピダス北海道工場の経済波及効果はどうなっているか。北海道新産業創造機構は、工場が1棟の場合のシナリオ1と2棟の場合のシナリオ2を発表している(2023年11月21日付日経新聞)。最近、ラピダスは半導体工場を2棟建設することを公表しているので、以下ではシナリオ2について紹介する。
・工場の数:第1工場+第2工場
・シリコンウエハの生産規模:工場1棟当たり月産2万枚
・量産開始時期:第1棟が2027年度、第2棟が2030年度
・関連事業所の新規立地数:70カ所
・関連産業を含む従業員数:3600人
このシナリオ2による2036年までの経済波及効果は合計18.8兆円と試算されている。その内訳は以下の通りである。
・最先端半導体生産による波及効果:10兆円
・ラピダスの工場などへの設備投資の投資効果:8.5兆円
・関連産業における工場・設備の投資効果:約3000億円
そして、北海道新産業創造機構の藤井裕理事長(道経連会長)は記者会見で「北海道でこれほどの投資規模は例がない。新たな基幹産業ができる千載一遇のチャンスだ」と語ったという(前掲の日経新聞)。
「100年に1度」のTSMC熊本工場にしても、「1000年に1度」のラピダス北海道工場にしても、まだ半導体を生産しておらず、量産できるかどうかも分からないのに、取らぬ狸の皮算用的な巨額な数字をでっちあげたものだと呆気にとられる思いである。そして冒頭でも述べたように、この巨額な補助金と巨額な経済波及効果は、過疎地への原発の誘致を髣髴(ほうふつ)とさせる。以下では、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所を例に、その経済波及効果を見てみよう。