しかし、武器をロシアに提供し、人民軍の一部をロシア側に派兵することは自国の武器在庫や兵力が減少することを意味する。韓国軍の侵攻というシナリオを考えるならば、本来警戒しなければならない状況だ。だから、韓国に対しては強硬姿勢を見せる必要が出てくるわけだ。韓国への戦闘準備といった攻撃的な作戦ではない。北は現在、韓国と軍事衝突したいとは考えていない。韓国には強硬姿勢を誇示して牽制しているだけだ(ロシアも北朝鮮が現時点で韓国軍と一戦を交えることを願っていない。武器の供給、兵士の確保が難しくなるからだ)。

平壌上空に侵入した無人機から北朝鮮体制を批判するビラが散布されたとして、金正恩総書記の実妹の金与正党副部長が14日、韓国に対して威嚇発言の談話を発表したが、その狙いは韓国への威嚇ではなく、北国内の治安の堅持という守りの政策から出てきたものだろう。

核大国を目指す金正恩総書記はロシアから核関連技術の支援を手に入れたいと腐心している。北朝鮮はこれまで6回の核実験を実施したが、放射性物質が検出されたのは1回目と3回目だけで、残りの4回の核実験後、キセノン131、キセノン133など放射性物質は検出されていない。北の核実験で放射性物質が検出されにくい理由として、北朝鮮の山脈は強固な岩から成り立っているため、放射性物質が外部に流出するのに時間がかかるからだといわれてきた。それだけではないだろう。核実験で技術的な問題が浮かび上がっているからではないか。もしその通りならば、北側は7回目の核実験をどうしても実施しなければならない(「中国が恐れる北の核実験による大惨事」2024年3月27日参考)。

そこで近日、北はロシアからの支援を受けて核実験を実施するのではないか、という予測が出てくるわけだ。中国側は北の核実験を願っていないが、プーチン氏にとって北側が核実験すれば、最新の核関連技術の成果を確認できるメリットがあるうえ、ウクライナや欧米諸国にも圧力を行使できる。国際社会からの批判もロシアではなく、北側に向けられる。ロシアにとってメリットのほうが多いのだ。