そして私が知る限り、禁煙が高齢者にもたらすメリットを立証した研究はありませんでした」

確かに何十年も喫煙を続けている人にとって、タバコを吸うことは離れがたい日常生活の1つであり、強い動機付けがなければ禁煙には結び付きません。

喫煙を続ける多くの高齢者は、「今更禁煙したところでどうなるのだろうか。残りの短い人生を喫煙と共に楽しんだ方が良い」とさえ考えるかもしれません。

そこで今回、トウィ・レ氏ら研究チームは、がん予防の研究「Cancer Prevention Study II」、アメリカ国民健康インタビュー調査「National Health Interview Survey」における喫煙データ、アメリカの年齢別死亡率「United States life tables」などを用い、禁煙がもたらす影響を年齢ごとに調べました。

それぞれのデータは、イレギュラーな新型コロナウイルスの影響を排除するため、2018年のものが用いられました。

そして、35歳、45歳、55歳、65歳、75歳のそれぞれの年齢まで喫煙していた人が失う寿命や、禁煙によって延びる余命の程度を明らかにしました。

その結果、35歳で禁煙すると、平均で8年寿命が延びると分かりました。

では、75歳で禁煙するとどうなるのでしょうか。

「何歳になっても禁煙するメリットはある」と判明

まず、「タバコを吸い続けた人」と「全く吸ってこなかった人」の違いを比較してみましょう。

研究の結果、成人になってから、35歳、45歳、55歳、65歳、75歳まで喫煙を続けていた人は、喫煙しないままその年齢まで過ごしてきた人と比べて、余命がそれぞれ、9.1年、8.3年、7.3年、5.9年、4.4年少ないと分かりました。

35歳の時点で、喫煙してきた人と喫煙してこなかった人では、余命に大きな差が生じることが分かります。

そして当然ですが、その後も喫煙を続ける人は死亡率が高くなり、実際に多くの人が亡くなります。