「資本論」の理論的限界とマルクスを超えた「新しいマルクス主義理論」の再構築
「資本論」は19世紀半ばのイギリス資本主義が対象であり、マルクスはそれ以後の資本主義の変貌を知らない。したがって、「窮乏化法則」のような19世紀的制約の命題は現代において妥当しないのは当然である(伊藤誠ほか「マルクスの逆襲」4~7頁日本評論社)。
20世紀になると資本主義は大きく変貌した。自由放任ではなく国家の経済への介入による「国家独占資本主義」(大内力「国家独占資本主義」262頁東京大学出版会)が出現し、国家が国民の生活を保障する「福祉国家」(岡沢憲芙「スウエーデンの挑戦」76頁岩波新書」)が誕生した。
さらに、21世紀になると、人工知能・情報通信・金融工学・宇宙開発・ロボット・先端医療・ハイテク産業など、マルクスが予想もしなかった先端産業や先端技術が次々に誕生している。まさに、21世紀の現代資本主義はシュンペーターの「創造的破壊」の世界そのものである。
そうだとすれば、21世紀の現代資本主義を踏まえ、マルクスの「資本主義崩壊論」「窮乏化法則」「労働価値説」「階級闘争」「暴力革命」「プロレタリアート独裁」など、19世紀半ばの資本主義を対象としたマルクス「資本論」の理論的限界についても科学的に検証し、且つ、欧米・日本など21世紀の高度民主主義社会に適合し、マルクスを超えた「新しいマルクス主義理論」の再構築がなければ、「資本論」を理論的基礎とする「マルクス主義」は衰退への道を辿ることになるであろう。
「マルクス主義理論」に関する具体的検証事項試案「マルクス主義理論」に関する具体的検証事項試案は下記のとおりである。
資本主義崩壊論」(社会主義移行論)については、歴史的必然性・蓋然性の 有無に関する検証 「窮乏化法則」については、21世紀の現代資本主義社会における有効性に関す る検証 「労働価値説」については、21世紀の人工知能時代における有効性・妥当性に 関する検証 「階級闘争」については、膨大な中間層の出現による労資対立構造の変化に関す る検証 「暴力革命」については、21世紀の高度民主主義社会における相当性・妥当性 に関する検証 「プロレタリアート独裁」については、上記(5)と同様の相当性・妥当性に関す る検証