ここまで治癒が早まったのは、電気刺激によって「線維芽細胞(せんいがさいぼう)」の働きが活性化されたからだと分かりました。
線維芽細胞とは、皮膚の真皮層にある細胞であり、傷ついた組織に移動して大量のコラーゲンを作り、傷の修復を助ける役割があります。
そしてこの線維芽細胞の移動が、電気刺激を受けることで速くなり、結果として治癒が促進されたのです。
次に研究チームは、ラットを用いた動物実験を行いましたが、ここでも電気縫合糸は良い成果を収めました。
電気縫合糸を使用した場合、ラットの傷口が10日で96.5%塞がったのに対し、従来の縫合糸は、60.4%しか塞がらなかったのです。
加えて、ラットの傷口の感染の程度も確認したところ、毎日傷口を消毒しなくても、電気縫合を受けたラットは、従来の縫合を受けたラットよりも、細菌数を低く抑えることができていました。
これはつまり、電気縫合糸を使用することで、手術後の感染症にかかる確率を低減できることを示しています。
もちろん、現段階ではこの新しい電気縫合糸が、人間に対してどの程度の効果を発揮するのか分かりません。
それでも今後の研究で効果や安全性が示されるなら、患者を助けるための強力な選択肢が誕生することになります。
さすがに「動け!傷口が閉じるぞ!」とは言えませんが、ちょっとくらい動いても安心な時代が近づいているのです。
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参考文献
Smart stitches generate electricity on movement for faster healing
https://newatlas.com/medical-devices/smart-stitches-generate-electricity-faster-healing/