例えば、マンチェスター大学(University of Manchester)の2015年の研究でも、電気刺激によって新しい血管の形成が促進され、皮膚の傷の治癒が早まると報告されています。
この効果を縫合糸に組み込むなら、傷の治癒を早める縫合糸を生み出すことができるはずです。
そこでワン氏ら研究チームは、複数の層から作られた電気縫合糸を開発しました。
縫合部分の組織が動くと、この縫合糸の中間層と外層が擦れるようになっており、この動きが電荷を発生させるのです。
そのため患者が動く度に、縫合糸の周辺の組織に対して電気刺激が与えられ、治癒を促進してくれます。
しかもこの電気縫合糸は、生分解性ポリマーとマグネシウムでつくられており、医師は抜糸する必要がありません。
では、この新しい電気縫合糸は、傷口の治癒をどれほど早めてくれるのでしょうか。
電気縫合糸は傷の治癒スピードを50%も加速させる
新しく開発された電気縫合糸は、実験では2.3ボルトの電気を発生させることができました。
そして、この治癒効果を確かめるために、研究室で培養したマウス細胞を利用しました。
その結果、表面積の69%を占めていた傷は、電気縫合糸によって、24時間後には僅か10.8%にまで縮小しました。
一方で、従来の縫合糸を用いたケースでは、傷は24時間後に32.6%までしか縮小していませんでした。
電気縫合糸を使用することで、治癒が50%も早まったのです。