具体的には低濃度の塩化カリウムでCSDが発生するほど、つまり「閾値」が低いほど、片頭痛の感受性が高い(片頭痛になりやすい)と評価できます。
実験ではオスとメスのマウス25匹ずつ、生後8週齢(マウスはオスが生後8週齢で、メスが生後5週齢で性成熟に達する)を対象としました。
これを2つのグループに分け、一方をタバコの煙に1時間さらし、もう一方を何もせずに放置します。
その後、濃度の異なる塩化カリウムを大脳皮質に滴下したところ、オスマウスではタバコの煙の有無に関わらず、CSDの発生閾値に有意な差はありませんでした。
ところがメスマウスを見ると、タバコの煙にさらされたグループは何もせずに放置されたグループに比べて、低濃度の塩化カリウムでもCSDが発生するようになっていたのです。
このことはメスマウスが受動喫煙にさらされたことで片頭痛の感受性が高くなっていたことを示す証拠です。
この結果はヒトとも密接に関連すると考えられます。
というのも実は、ヒトにおいても片頭痛が特に発生しやすいのは「20〜40代の女性」であり、そのリスクは男性より3.6倍も高いことがわかっているからです。
マウスのメスやヒトの女性で片頭痛が起きやすい理由には、いくつかの要因が関与しています。
1つは「エストロゲン」などの女性ホルモンの作用です。
エストロゲンは脳の興奮性に影響を与え、片頭痛を起こしやすい状態にしていると指摘されています。
女性は月経周期などでエストロゲンを含むホルモンバランスが定期的に乱れるため、男性よりも片頭痛を起こしやすいのです。
もう1つは「神経系の感受性」の問題です。
過去の研究では一般に、女性の神経系の方が男性のそれよりも環境ストレスや外部刺激に敏感であることが示されています。