それと同時に、片頭痛を誘発する因子として指摘されてきたのが「受動喫煙」でした。
家族や知人、あるいは職場や生活環境に喫煙者がよくいる人では片頭痛が起きやすくなる傾向が知られており、臨床現場ではすでに「片頭痛持ちの患者は喫煙者の近くに寄らないよう」指導されることもあります。
しかし受動喫煙で本当に片頭痛が起きやすくなるのか、その科学的な証拠はまだ得られていません。
そこで研究チームは今回、マウスを受動喫煙にさらして片頭痛が誘発されやすくなるのかどうかを検証しました。
タバコの煙で片頭痛のリスク増!特に「女性」が注意
実験では受動喫煙が片頭痛に与える影響を調べるため、タバコの煙にさらしたマウスと煙にさらさなかったマウスの脳を比較しました。
特に片頭痛の指標として調べるのは「CSD(皮質拡延性脱分極、Cortical spreading depolarization)」という現象です。
CSDとは、大脳皮質における神経細胞の脱分極(だつぶんきょく)が同心円状に2〜5 mm/分で広がっていく現象を指します。
脱分極とは、細胞内の電荷分布が変化し、細胞内のマイナス電荷が細胞外よりも少なくなることです。
つまり、細胞内の電荷がプラス方向に変化していく現象を指します。
これまでの研究で、CSDが発生すると血管の拡張が促され、片頭痛を起こしやすい状態になることがわかっていました。
ヒトにおいても片頭痛の前兆期にCSDが生じており、このCSDの発生しやすさが片頭痛のなりやすさの指標となっているのです。
またCSDは塩化カリウム(KCl)を大脳皮質へ滴下することによって誘発することができます。
そこで今回の実験では、マウスの大脳皮質に低濃度から高濃度の塩化カリウムを順に滴下していき、どの濃度でCSDが発生するかという「閾値(いきち:ここでは片頭痛を起こすのに必要な最低量の塩化カリウムを指す)」を調べてみました。