さらに24年9月15日からレアメタルの一種であるアンチモニーが輸出規制の対象となった。アンチモニーは自動車や電子機器などの難燃剤として使われ、最近では太陽電池のカバーガラス向けの清澄剤(透明度を上げる効果)として需要が拡大している。

アンチモニーは、2024年、主産地であるミャンマーの内戦やロシアへの経済制裁により供給リスクが高まり、今回の中国の輸出規制により、一層の価格高騰が懸念されている。ちなみにアンチモニー生産に占める中国の比率は約48%で世界生産のほぼ半分を独占している。

これまで中国は輸出管理法が2020年12月1日に施行されて以降、両用品目および技術輸出入許可証管理目録以外の特定品目を対象とする輸出管理措置が行われ、商用暗号や高圧水鉄砲製品、過塩素酸カリウムに関するものなどにとどまっていた。

2010年中国レアアースの対日輸出規制の教訓

中国の対日輸出規制で思い起こされるのは、2010年に尖閣諸島沖で起きた中国漁船と海上保安庁の巡視船との衝突事件を受けて、中国がレアアースの対日輸出を事実上規制したことだ。その際に中国は、同措置を「環境保護のため」と説明したが、世界貿易機関(WTO)に協定違反と認定された。この経験から、今回は安全保障上の理由と説明したとも言われている。

また、2010年のレアアースの対日輸出は、中国にとって誤算の面があった。当時、日本は中国以外からの調達や代替素材への移行を急速に進めた。その結果、日本のレアアースの輸入の9割程度を占めていた中国の比率は、足元で6割程度まで低下した。中国は市場を失うとともに、需要後退によるレアアースの価格下落にも見舞われたのだ。

この時の苦い経験もあることから、今後、中国がどの程度厳格なレアメタルの輸出規制を行うかは不確実だ。

日本はどう対応するべきか

ガリウムについて言えば、中国が生産シェアの8割以上を握ってはいるものの、ガリウムはアルミニウム精錬の副産物として得ることができるため、他の国から入手することも可能だ。また日本では、リサイクルによる調達も多い。そのため、日本企業がガリウムをまったく入手できなくなってしまう可能性は低い。