分析では、年齢、性別、追跡期間前の健康状態などの影響も考慮した上で、非アクティブな手段の人たちと比べて、自転車、徒歩の人たちがどれぐらい健康であったのか、8つの健康関連項目と交通事故による入院の有無という観点から調べました。
その結果、徒歩、自転車のどちらであっても、健康効果が認められましたが、統計学的には、自転車通勤の方が多くの指標で効果が認められました(死亡、入院、メンタルヘルスの処方箋のリスクなど、8項目中7項目)。
アクティブな通勤、通学は、運動そのものを目的としなくても、運動をしたのと同じような効果が得られる点が魅力です。
新型コロナウイルスの流行以降、広まった在宅ワークには便利な側面もありますが、今回の結果を踏まえると、体を動かす機会が減り、不便になったという側面もあると言えます。
ただ、注意したい結果として、自転車通勤者は、交通事故による入院リスクが1.98倍になっていて、交通事故に遭遇するリスクも浮かび上がってきました。
ダンダス教授らも、自転車通勤者は交通事故による入院リスクが2倍になったという結果は、安全な自転車インフラの整備の必要性を裏付けるものだと述べています。
今回の研究は、ヨーロッパのスコットランドで行われたものですが、日本における自転車による交通事故のリスクはどの程度のものなのでしょうか?
階段を使っても十分健康になれる
まず、警察庁の統計資料によると、2023年の自転車関連事故の件数は7万2339件で、前年に比べて増加傾向です。
また、全ての交通事故に占める自転車関連事故の比率も、2017年以降増加しています(23.5%)。
その一方で、死者数や重傷者数について、他の交通手段と合わせて見ると、歩行や自動車に比べて自転車の方が少ないことから、歩行や自動車の方が安全とは必ずしも言えないようです。