キツツキは1秒間に20〜25回ものスピードで木をつつきますが、それによって脳を痛める様子はまったくありません。
これは専門家にとって長年の謎であり、可能性としては「くちばしと頭蓋骨の間に”衝撃吸収材”があり、それが脳を守っている」という説が有力視されてきました。
このアイデアは、アメフトのようなコンタクトスポーツの怪我防止ヘルメットの開発にも応用できると考えられたほどです。
しかし、ベルギー・アントワープ大学(University of Antwerp)らの2022年の研究で、キツツキには、衝撃から脳を保護する吸収材がまったく存在しないことが判明しました。
むしろ、キツツキは衝撃を真正面からモロに受けていたようです。
そうだとすれば、なぜ彼らは頭痛や脳震盪を起こさないのでしょうか?
研究の詳細は、2022年7月14日付で科学雑誌『Current Biology』に掲載されています。
目次
- つつきの衝撃はまったく軽減されていなかった!
- キツツキの脳サイズなら、脳震盪は起きない
つつきの衝撃はまったく軽減されていなかった!
本研究では、「キツツキが脳を保護するために衝撃を吸収している」という大方の説を検証するため、高速度カメラを用いて、3種のキツツキのつつき行動を撮影しました。
対象としたのは、クマゲラ、エボシクマゲラ、アカゲラの3種で、木をつつく様子を1秒間に最大4000フレームで記録し、衝撃を受けた際のくちばしや頭の微妙な動きを分析しました。
その結果、つつきによる衝撃はまったく減衰しておらず、くちばしや頭へ衝撃をまともに受けていたのです。
動画上で、キツツキのくちばしとその付け根、それから脳の部分に色違いのマーカーを付してみると、すべての箇所が木をつついた瞬間に、まったく同じスピードで停止していました。
これは、くちばしから頭蓋骨に至るまで、衝撃を一切吸収していないことを意味します。