かつては、どっちつかずだったミドリムシも、少しずつ進化の系譜がわかってきたと言えるでしょう。

現在、ミドリムシの仲間は120種以上が知られており、多くは水田や沼、湖など、流れの少ない淡水や、わずかに塩分を含む水域に生息しています。

ほとんどのミドリムシは紡錘型(細長い形)をしており、ペリクルと呼ばれるタンパク質でできた膜に覆われていて、らせん状の溝が刻まれています。

細胞の端には、鞭毛(べんもう)という細いひも状の構造があり、これを回転させて水中を動きます。

また、光、温度、酸素濃度に応じて、好ましい方向に進む「走性」を持っています。

しかしなぜ、このミドリムシがジェット燃料として注目されるようになったのでしょうか。

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ミドリムシの画像 / Credit : 科学技術振興機構公式Webサイト

ジェット燃料への適用

ミドリムシが生成する油脂成分は、炭素数が14前後の脂肪酸やアルコールから構成されており、既存のジェット燃料や軽油の成分に近いとされています。

既存の化石燃料と同じような特性を持つため燃焼時のエネルギー効率も十分です。

また、注目すべきなのは、ミドリムシがバイオ燃料に用いる他の生物と比較して油脂生成を効率よく行えるということです。

それでは、なぜミドリムシは細胞内で油脂を生成できるのでしょうか。

通常、ミドリムシは光合成や有機炭素源を利用してエネルギーを得ていますが、窒素や酸素が不足するような環境ストレスにさらされると、細胞内にエネルギーを蓄えるために、特有の代謝経路であるワックスエステル発酵回路が活性化します。

バイオ燃料になるワックスエステルは、ミドリムシがエネルギーを必要とする際に分解して、再利用する貯蔵エネルギーとしての役割を果たしています。

ミドリムシにとっては、環境が悪化すればするほどこのワックスエステルを細胞内で多く生成しようとするわけです。

言い換えれば、バイオ燃料へ活用するには、このミドリムシの自己防衛機能をできるだけ強化すればいいのです。