ただ少女の正体が誰にせよ、彼女が今も世界中の人々の目をとらえて離さない魅力を秘めていることは確かです。
そこでマウリッツハイス美術館は今回、脳科学者と協力し、なぜ私たちが『真珠の耳飾りの少女』に強く魅了されるのかを脳活動から解き明かすことにしました。
脳を虜にする秘密が隠されていた!
調査では20名のボランティアを対象に、視線を追跡するアイトラッカーと脳波(EEG)を非侵襲的に測定できるキャップを装着し、同館に所蔵されている『真珠の耳飾りの少女』を鑑賞してもらいました。
また比較対象として、他の4つの絵画でも同じことを行っています。
1つ目はオランダの画家ヘラルト・ファン・ホントホルスト(1592〜1656)の作品『ヴァイオリン弾き』(1626年)で、2つ目は同じくオランダの画家レンブラント(1606〜1669)の作品『テュルプ博士の解剖学講義』(1632)。
3つ目が同じくレンブラントの作品『63歳の自画像』(1669)で、4つ目がフェルメールの作品『デルフト眺望』(1660〜1666頃)です。
そして実験の結果、『真珠の耳飾りの少女』を鑑賞したときにだけ、他の4作品では見られない「持続的注意ループ(sustained attentional loop)」という神経活動現象が起こっていることがわかりました。
これは鑑賞者の視線が絵画の各ポイントを順番に繰り返し移動し続ける現象を指します。
アイトラッカーのデータと合わせて分析すると、鑑賞者の視線はまず少女の瞳に奪われ、その次に口元に移動し、最後に真珠の耳飾りへと移り、このトライアングルのサイクルを延々と繰り返していたのです(下図を参照)。
このように観る者の視覚的注意が固定され続けることで、絵画から目が離せなくなり、他のどの作品よりも鑑賞時間が長くなっていました。