- 日本の国内企業物価指数
前回までは、実際の家計の消費となる現実個別消費についてご紹介してきました。
日本では家計最終消費支出が停滞傾向ですが、政府個別消費支出の増加もあり、現実個別消費は増加傾向となっています。
ただし、国際比較してみると先進国の中では、やや平均値を下回る水準のようです。
日本は物価が停滞してきた事が特徴です。
私たち消費者が直接購入するモノやサービスなどを対象とする消費者物価指数だけでなく、企業間取引の物価も停滞が続いてきたようです。
今回は、このような企業物価指数についてご紹介したいと思います。
企業物価指数 (総務省統計局ホームページより引用) 企業物価指数とは、企業間で取引される財に関する物価の変動を測定するものです。その主な目的は、企業間で取引される財に関する価格の集約を通じて、財の需給動向を把握し、景気動向ひいては金融政策を判断するための材料を提供することにあります。
企業物価指数は、国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の3指標が公表されています。
今回は、国内企業物価指数に着目してみましょう。
国内企業物価指数は更に大分類として、工業製品、農林水産物、鉱産物、電力・都市ガス・水道、スクラップ類から構成されています。
図1が日本の国内企業物価指数の推移です。1960年を基準(1.0)とした倍率として表現しています。
青が国内企業物価指数の総平均値となりますが、1970年代の狂乱物価等で上昇した後は、1980年代から長期間停滞している事がわかります。
参考までに消費者物価指数(黒)も表記していますが、消費者物価指数が2000年頃まで緩やかに上昇していたのに比べて、国内企業物価指数は1980年代から既に停滞が始まっていたのは意外かもしれませんね。
国内企業物価指数は、ほぼ工業製品(赤)と連動して推移している事がわかります。
国内企業物価指数が大きく工業製品の物価に影響を受けている事になりますね。
農林水産物、鉱産物、電力・都市ガス・水道も停滞傾向が続いている事がわかります。
ただし、鉱産物、電力・都市ガス・水道は2023年に極端に上昇していて、工業製品や国内企業物価指数もやや上昇しています。
工業製品のさらに詳細な項目の推移を見ると印象的です。
まず、生産用機器(橙)が工業製品と同じくらいの水準で推移していますが、一方で情報通信機器、電子部品・デバイスは大きく値下がりしています。
1960年代の10%にも満たない水準です。これは、通信速度や処理速度が向上したことで、単位性能あたりの費用が極端に下がった事によると推測できそうですね。
自動車などの輸送用機器は1974年まで上昇した後は少しずつ低下しています。
一方で、輸入の影響も大きいと思われる石油・石炭製品、木材・木製品は大きく上昇しています。
私たちが普段購入するモノやサービスよりも、企業間の取引の物価の方が20年ほど先行して停滞が始まったというのはとても印象的です。