他の部分も同様に拡大すると、やはり全てが1本のひもが複雑に畳まれたり絡んだりして構成されていることがわかります。
このひもの正体は、アミノ酸が延々と連なったものになります。
つまりタンパク質とはアミノ酸がつながってできたひもが、複雑に絡み合うことで作られているのです。
そしてアミノ酸の繋がる順番はDNAに刻まれています。
特にDNAの中で伝統的に「遺伝子」と呼ばれている部分に刻まれている部分は、ほぼ全てがアミノ酸の繋がる順番を記すものになっており、それ以外の情報の占める割合は僅かなものになっています。
DNAが生命の設計図と言われるのは、アミノ酸の順番を記しているからなのです。
しかしそうなると気になることが出てきます。
遺伝子に刻まれている情報はアミノ酸の順番だけなのに、どうしてタンパク質たちはあんな複雑な形に変化できるのでしょうか?
最も大きな要因の1つはアミノ酸自身が持つ多様な結合能力です。
アミノ酸は分子の各所にプラスが優勢な場所やマイナスが優勢な場所、水素結合を起こしやすい場所が存在しており、適切にアミノ酸を繋げるだけである程度、勝手に変形して、自分自身を複雑な形に組み上げてくれるのです。
(※他にもアミノ酸内部の原子には大きさに差があり、大きさの差によって可動域が限定され、組み上がりかたもそれに左右されます)
先に紹介したらせん状の構造も、アミノ酸たちが持つ結合作用による「芸術」の1つとなっています。
また重要な点として、細胞の中には、長くなったアミノ酸の列を適切な形に折りたたまれるように助けてくれる「折り畳みの介護人」のような機能をもったタンパク質も存在することも知られています。
このような介護の助けもあり、酸素と結合できる機能を持ったタンパク質(ヘモグロビン)や、ウイルスを見つけて攻撃するタンパク質(抗体)や、神経から送られてくる電気信号をもとに収縮するタンパク質(筋肉繊維の中のアクチンとミオシン)など、多様なタンパク質が作られるのです。