では学者に研究費をもっと出せないのか、という点はどうでしょうか?アメリカの大学の基金の規模が尋常ではない、これが差になっています。文科省の資料によるとハーバード、イェール大学あたりで4.5-3.3兆円レベル、それに対して東大で190億円、日本で最大が慶応の870億円規模です。(2020年実績で東大は現在ではだいぶ増えているはずです。)基金というのはこれを原資にして運用し、その運用益を主体に研究開発、大学施設の増強を行います。つまり基金の原資は原則減らないようになっています。そのうえ、毎年どんどん寄付金が入り、原資は膨れる一方なのです。この資金力の差は残念ながら何ともしがたいのであります。
アメリカは大金持ちが多いと言われますが、彼らの大半は何らかの社会貢献を行っており、出身大学への寄付金もとてつもないレベルで行う人もいます。ずいぶん前ですが、私がバンクーバーでクライアントと食事していた際、そこにその父親がたまたま来て「おい、お前もここで飯を食っているのか?俺は今日、出身大学に5億円寄付してきたぞ。〇〇が1億円寄付したって自慢げに言っているからその5倍出したよ、ははは」。あのシーンは一生忘れません。
教育でもスポーツでも金がかかります。これは残念ながら否定しずらい事実です。日本が花咲くにはどうにかして退蔵されているマネーを活性化し、こういう形で投資していかねばならないと思います。そして教育の側面支援を磨き直さないと日本からノーベル賞がいよいよ遠ざかることになるかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年10月11日の記事より転載させていただきました。