しかし文字を使ったプログラミングではいくら頑張っても、夕日という抽象的な概念をコンピューターに教えることはできなかったからです。
同様の壁は画像認識以外にもさまざまな分野に存在しました。
私たち人間の言語や音声、色彩感覚などの多くは、プログラミング言語に変換するのが困難だったからです。
さらに一部の研究者たちは、現実世界の多様な学習状況に対応できるプログラムは作成不可能であるとの結論に至りました。
絵画の間違い探しのために作られたプログラムでチェスをしたり、新しい化合物を探したり、テニスを行うのは数学的に不可能としたからです。
この結論は、どんなに優秀なプログラマーが存在しても、人間のような汎用的なスキルを備えたAIをプログラミングで作り上げるのは無理であることを意味します。
人間によるプログラミングこそがコンピューターの神髄であると考えられていた時代、この結論は重いものでした。
脳の機能をコンピューターで模倣しようとする「人工ニューラルネット」開発の試みも古くは1960年代から存在していましたが、著名なプロジェクトの多くが失敗に終わってしまいました。
そのため現在のAIの盛況さ(AIの春)と比較して、1970年代中頃から2000年代初頭にかけた時期は「AIの冬」と呼ばれることもあります。
しかし中世の暗黒時代に、後の繁栄の時代の基礎が確立されたように、「AIの冬」の真っただ中にあって、密かな革命が起き始めていました。
そのきっかけは、ネットワークに含まれるエネルギーについての物理学研究でした。