極右を排除するという理由で、政治信条が異なる同士が結集して連立政権を発足させる。時間の経過とともに、その連立政権は政権内で政策の相違から対立を繰り返す。ドイツのショルツ政権をみれば良くわかる。ショルツ政権は社会民主党、「緑の党」、それにリベラルな政党「自由民主党」の3党から構成されている。ドイツの政界では3党連立政権は初のケースだった。政権発足後3年目が終わろうとしているが、世論調査によるとショルツ政権を支持している国民は30%前後だ。過半数以上の国民は現連立政権の政治に不満を感じているのだ。

同じことが隣国オーストリアでも生じようとしている。極右党外しで発足する新政権は政治信条ばかりか、その政党を支持した有権者も異なっている。政権維持だけが目的となり、必要な国の抜本的な改革は実施できない。

それでは第1党となった極右政党に政権を担当させ、その政治手腕をチェック、必要となれば他の4党が結束して極右主導政権に対して不信任案を提出して、退陣を要求する。極右政党に票を投じた有権者にとってはそれが最も公平かもしれない。なお、キックル党首は7日、国民に向けて「民主主義、法の支配、そしてオーストリア国民に対する自由党の立場」を発表している。

同国では今月13日、フォアアールベルク州、11月24日にはシュタイアーマルク州の州議会選が実施される。ここでも自由党の躍進が予想されている。

「極右党との連立はあり得るか」・・右傾化する欧州の政界でオーストリア国民はその問いに対して答えを強いられてきた。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年10月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。