もう一つの切り口は経済学論争です。巨大企業の功罪は経済学者の論争の対象の一つであり、独占に対して融和的なシカゴ学派に対して今回の主張は反トラスト法を掲げる新ブランダイス派とされます。反トラスト法とは一種の独占禁止法ですから一つの企業が圧倒的市場シェアを独り占めするは経済学的に正しくないとするわけです。
歴史的にはアメリカは反トラスト法が主流だったのですが、60年代ごろからシカゴ学派の思想に変わっていきます。現在は過渡期にあるわけです。
ではおまえはどう思うのか、と聞かれると分割しても問題ないと思う、と答えます。
1-2年ぐらい前に「コングロマリット ディスカウント」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。そう、東芝を分割すべきかという議論の時に出た言葉です。平たく言うとある企業が3つの事業を持っており、それぞれの価値が5と7と3だとします。合計で15になるはずですが、この会社の価値は実際には13にしかならないことがしばしば起きています。つまりこの差の2がコングロマリット ディスカウントということになります。東芝の時は故に分割してもいいじゃないか、という議論が出たわけです。
では実際に会社分割をしたGE(ゼネラル エレクトリック社)のケースはどうだったでしょうか?私は分割前から株主でして、つい数週間前に分割された株式を含め全部きれいに売却したのですが、会社の価値は想定以上に上がったと申し上げます。ざっくり2倍以上になり、株価はまだ上昇を続けています。私は一種の細胞分裂だと思うのです。そしてそれぞれの細胞が単独で生き、成長する力を持っている場合、分割は有効だと言えるでしょう。
似たケースに傘下に目薬のボシュロムを抱えるカナダ企業のボッシュ ヘルスがあります。そこも私が好きな銘柄で長年売り買いを繰り返していますが、分割により会社価値が向上し、もともとの親会社の借金を大幅に削減させ、会社再建が大幅に進んでいる状況です。