不法入国者の不法投票こそ認めないが、やがては不法に入国した巨大な数の男女にアメリカの国籍を与え、当然、投票の権利も与えるという方針なのだ。この考え方の典型例は上院民主党の院内総務チャック・シューマー議員の最近の言明である。

アメリカの繁栄への究極の方法は1100万ともされる、書類のない外国からの入国者にみな市民権を与え、アメリカに貢献させることだ。

シューマー議員の「書類のない外国からの入国者」というのは不法入国者のことである。不法入国者もやがてはアメリカ国民として大統領選挙での投票権をも与えるという基本方針なのだ。ハリス大統領候補は不法入国者への国籍付与までは語らないが、本国への強制送還には反対する。トランプ候補はその強制送還を公約とし、不法入国者の投票に警告を発する。

上院の共和党議員で駐日大使をも経験したビル・ハガティ氏は「民主党は年来、新規にアメリカにきた移民を獲得する手段に長けており、不法入国者の票も実際に多数、利用してきた。連邦議会の構成もその不正票の利用がなければ、大幅に変わっている」とまで厳しく論評する。

民主党はこうした指摘や批判に対して、共和党の投票手続きの厳格化の主張は公正な選挙への不当な干渉だと反論する。下院の民主党院内総務のハキーム・ジェフリース議員は「たとえ共和党の主張する不法入国者の投票が事実だとしても、いずれもごく少数の事例であり、全体の選挙への影響はゼロに等しい」と主張して、共和党の主張は民主党支持の有権者への不当な圧力だと非難した。

さてこの不法入国者と不正投票という疑惑が11月5日という目前に迫った大統領選挙の最終投票をどう動かすか。真剣な関心が集まっている。

古森 義久(Komori Yoshihisa) 1963年、慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。1972年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。著書に『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす』『米中激突と日本の針路』ほか多数。