イスラエルの著名な歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は昨年10月27日の英国の著名なジャーナリスト、ピアス・モルゲン氏のショー(Uncensored)の中で、「歴史問題で最悪の対応は過去の出来事を修正したり、救済しようとすることだ。歴史的出来事は過去に起きたことで、それを修正したり、その時代の人々を救済することはできない。私たちは未来に目を向ける必要がある」と強調。「歴史で傷ついた者がそれゆえに他者を傷つけることは正当化できない。『平和』(peace)と『公平』(justice)のどちらかを選ばなければならないとすれば、『平和』を選ぶべきだ。世界の歴史で『平和協定』といわれるものは紛争当事者の妥協を土台として成立されたものが多い。『平和』ではなく、『公平』を選び、完全な公平を主張し出したならば、戦いは続く」と説明していた(「イスラエルよ、公平より平和を選べ」2023年12月1日参考)。

ユヴァル・ノア・ハラリ氏インスタグラムより

上記のハラリ氏の発言は当コラム欄でも何度も紹介してきた。世界の歴史に精通した歴史学者の主張は、中東情勢をフォローしていく中で、益々、「その通りだ」と思わざるを得なくなった。

中東は「アブラハムを信仰の祖」とするユダヤ教・キリスト教、イスラム教の発祥の地だ。彼らは神のジャスティスを最重要視する。それこそ信仰だ。ただ、個々の民族のジャスティスに拘るのではなく、それを止揚して神のそれに立ち返るべき時だ。同じ神を信仰しながら、双方が殺し合うことほど、親である神にとって悲しいことはないだろう。息子を拉致されて泣くイスラエルの母親、夫と息子を失って途方に暮れるパレスチナ人の若い女性、彼らの姿に神も泣いているはずだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年10月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。