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世界に通用する新時代のベストスモールを追求した4代目
国内ユーザーのニーズから離れ、乗ればいいんだけど…な車
世界に通用する新時代のベストスモールを追求した4代目
こうして「日本国内向けが中心の経済的なリッターカー」から「世界に通用する新時代のベストスモールを追求した」と称する4代目シャレードは、全幅は5mmだけ大きく、全高は変わらず、しかし全長は70mm、ホイールベースは55mm延長されました。
これによって前後の乗員4人(定員は5人)は快適性が向上するとともに、荷室容量は3代目の197Lから235Lへと拡大(ハッチバック車)し、乗員スペースと積載スペースを両立して使い勝手は向上。
トヨタ スターレット(当時は4代目P80系)とほぼ同じ寸法で重量は増加し、1リッターが廃止されたエンジンはハッチバックで当初1.3リッター、後に1.5リッターが追加され、ホットモデルのシャレードは1.6リッター、4ドアセダンのソシアルは1.5リッターのみ。
排気量アップで燃費が悪化するのを防ぐため、当時の同クラス車としては贅沢なことに全車5速MT/4速AT化され、ハイギアード化された燃費志向のギア比でむしろガソリン車比では燃費が向上しています。
リッターカーから「普通のコンパクトカー」となって、従来より1クラス上のライバルと争うことになった4代目シャレードですが、廉価版は設けず高品質路線の「コンパクトだけどちょっとイイクルマ」として売り出し、事実ライバルより上回る部分も少なくありません。
ただ、ユーザーがダイハツに求める小型車とはそれでいいのか…となると、特に国内ではちょっと異なりました。
国内ユーザーのニーズから離れ、乗ればいいんだけど…な車
ユーザーの新たなニーズをつかむつもりで開発されたシャレードですが、ユーザーがダイハツに求めていたのは、小さくて多少狭くとも工夫で車内スペースを確保し、税制面で有利な1リッターエンジンを積む経済的なリッターカーでした。
それでも3代目はワイド&ロースタイルのスポーティ路線がクルマ好きには刺さったものの、4代目シャレードはパッと見で他社ライバルと明確な差がなく、飛び抜けた性能というわけでも、やたらと燃費だけはいいという個性もない、没個性なクルマだったのです。
街を走っていても「どこでも売っているような、どうということもないクルマ」にしか見えないのでは、「乗ってみればいいクルマだとわかる」としても、販売面でよい結果を出すには厳しくなります。
一時期のスズキもそうでしたが、軽自動車メーカーらしい小型車づくりの特色を失い、「なんかトヨタみたいな」クルマになってしまうなら、大抵の人は店舗が多く安心感の強い、無難なトヨタ車を買った方がいいわけで、これが4代目シャレードの致命傷でした。
4ドアのソシアルも含め、輸出は3代目同様にソコソコうまくいったのか、生産は後継車(ストーリアなど)が登場後の1999年まで、販売も2000年まで継続されたものの、末期には売っているのか?というくらい存在感を失っていたのです。
なお、余談として1998年にトヨタがダイハツからストーリアのOEM供給を受けた時、ある自動車雑誌の突撃電話取材企画で「ストーリアだけじゃなくシャレードもカローラIIIとしてトヨタカローラ店へ供給したらどうか」と、提案したことがありました。
しかしその取材を受けたダイハツ側(ディーラーだったかもしれません)の担当者はすっかり意気消沈しており、ボソリと「酷な話をしますよね…(※)」とつぶやいたあたりで、取材担当者も何かを察して、なだめに回るという一幕があったものです。
(※カローラ店に出したからって、今さらシャレードが売れるわけないじゃないですかという意)