バチカン教皇庁は2022年7月21日、ドイツ司教会議の改革案に対し、「司教と信者に新しい形態の統治と教義と道徳の方向性を導入し、それを受け入れるように強いることは許されない。普遍的な教会のシステムを一方的に変更することを意味し、脅威となる」として「ドイツ教会の行き過ぎ」に警告を発した。

フランシスコ教皇自身も「ドイツには立派な福音教会(プロテスタント派教会=新教)が存在する。第2の福音教会はドイツでは要らないだろう」と述べ、ドイツ教会司教会議の改革案に異議を唱えたのだ。

それではドイツ教会が提示した改革案は何だったのか。

ローマ・カトリック教会はバチカン教皇庁、そして最高指導者ローマ教皇を中心とした「中央集権制」だ。それに対して、ドイツ教会司教会議は各国の教会の意向を重視し、その平信徒の意向を最大限に尊重する「非中央集権制」を提案 聖職者の性犯罪を防止する一方、LGBTQ(性的少数派)を擁護し、同性愛者へ教会をオープンにする 女性信者を教会運営の指導部に参画させる。「女性聖職者」を認める 聖職者の独身制は教会のドグマではなく、伝統であることから、その制度の見直し。既婚者の聖職者の道を開く

4項目の内容を見る限りでは、フランシスコ教皇でなくても、カトリック教会の“福音教会化”と揶揄されても可笑しくはない内容だ。バチカンで「それでは何のためにカトリック教会か」という疑問の声が出てくるのは頷ける。

カトリック教会では改革を拒否する保守派聖職者と刷新を求める改革派の聖職者がいることは周知の事実だ。どちらが主導権を握るかは、その時代のローマ教皇の意向にかかっている。

世界シノドスを提唱したフランシスコ教皇は南米出身らしく陽気で明るく、教会の刷新には積極的な発言を繰り返してきたが、教皇就任11年目が経過したが、聖職者の独身制の廃止、女性聖職者の導入などでは依然何も変わっていない。

教会の刷新では合格点が取れる成果ではない。世界シノドスの最終的成果を見ない限り何もいえないが、フランシスコ教皇がカトリック教会の歴史で「教会刷新者」としてその名を残すかは分からない。