「教会は深刻な病気だ」と語ったチェコの著名な宗教社会学者トマーシュ・ハリーフ氏の言葉を思い出すまでもなく、教会は現在病んでいる。もちろん、教会が病んでいるのは今回が初めての事ではない。長い教会の歴史の中でさまざまな教会刷新を試みる出来事があった。

前世紀(20世紀)でカトリック教会で最大の改革運動は第2バチカン公会議だった。第2バチカン公会議を提唱したヨハネ23世(在位1958年~63年)は公会議開催1カ月前、「世界はキリストを必要としている。そして、キリストを世界にもたらすことは教会の使命だ。世界は解決策を切望している様々な問題を抱えている。今、世界と対話を始めよう」と呼びかけている。

「アジョルナメント」(現代化)は第2バチカン公会議のキーワードとなった。「真実を変えることはできないが、今日のために別の方法で宣言する必要がある」と述べている(「『第2バチカン公会議』60年目の現状」2022年10月15日参考)。

第2バチカン公会議(1962年から65年)から60年余りが経過した。カトリック教会では聖職者の未成年者への性的虐待問題、財政不正問題などが次々と明らかになり、教会への信頼は地に落ちてしまった。教会から背を向ける信者たちが年々増加している。ヨハネ23世は1962年10月、教会の近代化を目指して第2バチカン公会議を開催したが、第266代教皇のフランシスコ教皇は2019年6月、教会の刷新(シノドスの道)を提唱したわけだ。

フランシスコ教皇が取り組もうとする改革は教会の近代化を提唱した第2バチカン会議のやり直しではないだろう。同教皇に教会刷新を直接の契機はいわれもなく聖職者の未成年者への性的虐待問題の発覚と、その問題を隠蔽してきた教会の責任だ。

ところで、フランシスコ教皇は2019年6月、シノドスの道と呼ばれる教会改革のプロセスに号令をかけたが、それに応じてドイツのカトリック教会が早速、教会改革案を提示したが、問題が生じたのだ。ドイツのカトリック教会司教会議(議長ゲオルク・ベッツィング司教)が推進中の教会刷新策(通称シノダルパス)に対し、「その改革案は行き過ぎだ」という声が教会内外で聞こえてきたのだ(「教皇『教会改革も行き過ぎはダメ』」2022年7月23日参考)。