米老舗高級百貨店バーニーズ・ニューヨークが、連邦破産法の適用申請を含む選択肢を検討しているとの報道が話題となった。日本でも地方の独立系百貨店が窮地に立たされる中、「時代に応じたビジネスモデルの重要性」に目を向ける時期が訪れているのではないだろうか。
NYの老舗百貨店「バーニーズ・ニューヨーク」が破産申請
バーニーズ・ニューヨークは創業1923年、米国主要都市に28店舗、日本でも12店舗(ともにアウトレット含む)を展開する。同社の経営難に関しては以前から報じられていたものの、2019年3月には、マンハッタン区マディソン・アベニュー旗艦店の規模縮小の報道を否定するなど、強気な姿勢を維持していた。
しかし7月に入り、破産申請の検討や再建計画をめぐる複数の関係者の証言をメディアが報じたことで、経営難の深刻化が浮上。しかし、その時点では最終決定は下されておらず、賃料の見直しなど他の救済策も模索中であった。同社は引き続き顧客を最優先し、「顧客の期待を卓越したサービス、製品、経験の提供に努める」とコメントしていたが、8月6日になり、ついに連邦破産法11条の適用を申請。今後は身売り先を探していく方針だ。
バーニーズの破産の理由は「高い賃料」?
バーニーズ・ニューヨークは、オリジナルブランドと欧米、日本などのデザイナーブランドを取り扱う世界有数の高級百貨店として、長年に渡り高い評価を受けてきた。しかし、国内主要都市の家賃高騰には勝てず、ニューヨークやカリフォルニア、シカゴ、ラスベガス、シアトルなど国内10店舗以上で利益が圧迫されている。
例えば2019年1月、マディソン・アベニュー旗艦店の年間賃料は、1,600万ドル(約17億円)から3,000万ドル(約32億円)に値上がりした。関係者の証言によると、同社は4月、ウェルズ・ファーゴと新たな貸し手であるTPGシックス・ストリート・パートナーズとの与信枠を5,000万ドル(約54億3,302万円)拡大したが、それも焼け石に水だったようだ。
ECサイトなどの台頭により、ビジネスモデルが時代にそぐわなくなったことも、経営不振の一因とされている。ロンドンを拠点とする高級ファッション通販サイト「NET-A-PORTER」(ネッタポルテ)のような新しいライバルの出現は、バーニーズ・ニューヨークの業績不振に拍車をかけたようだ。
日本のバーニーズの経営状況には影響なしか
米バーニーズの破産申請報道は日本のバーニーズファンにとって気がかりな報道だが、現時点において日本のバーニーズが影響を受ける心配はなさそうだ。
日本におけるバーニーズブランドの百貨店事業はライセンス経営のため、バーニーズ・ニューヨークと直接の資本関係はない。1990年に日本1号店が新宿にオープンした当初、株主は伊勢丹だったが、2015年にセブン&アイ・ホールディングスが100%子会社化している。
止まらない百貨店離れ?日本の百貨店の動向は
日本でも消費者の百貨店離れが加速している。全国の主要百貨店78社の2018年の売上高合計は5兆9,865億円で、2017年に続き減収。日本の百貨店事情は、25社の売上高が増収したのに対し53社が減収と、好調・不振が分かれているのが特徴だ。都市に多い有名百貨店は、持株会社のもとで経営統合し堅調を維持しているが、地方の独立系百貨店は厳しい現実に直面している。
2018年度決算における百貨店の売上高ランキングによれば、1位の(株)高島屋は7,246億円(前年比3.06%増)、2位の(株)そごう・西武は6,858億円(9.83%減)、3位の(株)三越伊勢丹は6,739億円だった(1.59%減)。1位の高島屋以外は、大手百貨店の経営統合によって誕生しているのも特徴と言える。
一方、地方からは大手百貨店が次々と撤退し、独立系百貨店は2018年だけでも十字屋(山形県)や丸栄(名古屋市)、ヤマトヤシキ(姫路市)といった老舗が閉店したほか、2019年の夏から秋にかけて、ヤナゲン岐阜県大垣本店、山交百貨店(山梨県)、伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店などが閉店を予定している。
このような都市と地方の「百貨店格差」は、地方の人口減少にともない、今後ますます拡大すると予想される。インターネットショッピングにはない顧客体験を生み出せるかが、今後の百貨店の勝敗を分けそうだ。
文・MONEY TIMES編集部
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