さて、石破氏のアメリカ側に向けての政策報告は「石破茂氏の日本の新安全保障時代・日本の外交政策の将来」と題され、ハドソン研究所から9月28日に発表された。そのなかで石破氏はアジア版NATOについて以下の骨子を述べていた。
ウクライナがロシアに侵略されたのはウクライナがNATOに加盟していなかったからだ。今日のウクライナは明日のアジアだ。ロシアを中国に置き換え、ウクライナを台湾に置き換えるべきだ。 アジアにはNATOのような集団防衛システムが無いことが戦争を起こしやすくしている。中国を抑止するには米欧側の諸国によるアジア版NATOの創設が不可欠だ。 アジア版NATOは中国、ロシア、北朝鮮の核戦力への抑止を確実にすべきだ。そのためにはアメリカの核のシェア(共同使用)、アメリカの核兵器のアジア地域への持ち込みを考慮すべきだ。 日本の自衛隊は従来、日本本土への攻撃のみへの対処の軍事行動を認められてきたが、アジア版NATOでは国内法を変えて、他の同盟諸国の防衛にも出動して戦うようにする。
以上のように、石破氏は新首相として、日本国内では述べてこなかった重大方針をアメリカ側に向けて発信したのだ。
中国を脅威対象とするアジア諸国による同盟、日本の自衛隊の他国防衛の戦闘、アメリカの核兵器の日本側との共同管理、そして日本国内への核兵器の持ち込み・・・いずれも日本の安保政策の根本的な改変となる。そんな構想を国内での議論はもちろん、示唆さえも無いままにアメリカに向けて表明する。この点だけでも日本国民への根本的な背信行為だと言えよう。
アメリカ側のこの石破構想への反応は予想通り、厳しかった。というよりも「相手にしない」という反応だった。
その実例を挙げよう。石破氏が政策報告を送った当の相手のハドソン研究所の日本部の上級研究員ジェームズ・プリシュタップ氏の論評である。同氏は国務、国防両省や国防大学で日米安保政策や東アジアの安保問題を担当してきたベテランの専門家である。