実験にあたってはまず、ドナー鎖(供給側)の先端にアミノ酸と結合できる非標準型の「t6A」と呼ばれる塩基を配置し、アクセプター鎖(貰う側)の最後尾にアミノ酸と結合可能な別の「mnm5U」と呼ばれる非標準型の塩基を配置しました。
(※両者の鎖は相補的な配列になっており、自然な結合が可能になっています)
そして研究者たちが双方を混ぜたところ僅かな熱でt6Aが破壊されて、そのアミノ酸をmum5Uに結合していたアミノ酸に渡している様子が確認できました。
またアミノ酸の受け渡しが完了すると、両方の鎖が乖離して自然に分解していきました。
研究者たちはこのプロセスを繰り返すことで、最大15個のアミノ酸を連結させられることを実験的に示しています。
これらの結果は、翻訳機(リボソーム)を必要とせずにRNAがアミノ酸を連結してタンパク質を作れる可能性を示します。
(※タンパク質はアミノ酸の連結によって作られます)
まずRNAが先に作られた
今回の研究により、RNAはアミノ酸を独自に重合してタンパク質を作れることが示されました。
既存のRNAワールド仮説ではRNAと翻訳機(リボソーム)の関係がニワトリと卵の関係のように矛盾していましたが、実験結果はRNAの生成が先立って行われたことを支持しています。
また純粋な意味でのRNAワールドは存在せず、RNAとタンパク質は常に同じ分子内に存在したと結論しています。
古代のRNAにも含まれていた非常に歴史ある塩基には、アミノ酸によって独自に修飾される機能があり、結合と乖離の繰り返しによってアミノ酸を伸長させることができました。
さらに、より長いRNAを用いた実験では、RNAの複数の地点でアミノ酸の重合が発生している様子も確認されています。
生命誕生の過程において、RNAとタンパク質の関係は互いに影響しあうことで、生命機能の働きを担う遺伝子や機能的なタンパク質が誕生したと考えられます。