この「バームクーヘンの集合」は、皮質骨に衝撃が加わった時に高い効果を発揮します。
衝撃によって生じた亀裂は、その進展が「バームクーヘン」の形に沿って周囲に逸れていくため、一気に骨が破損するようなことが無くなるのです。
つまり、皮質骨の内部にあるバームクーヘンのような構造が、破壊靭性(亀裂の進展や破壊に対する抵抗力)を高めています。
この構造を模倣するなら、従来の建材をはるかに強固なものにできるかもしれません。
人間の骨を模倣したコンクリートブロックは強度が5.6倍
建材として用いられるコンクリートブロックは、セメント(粘土や石灰石などを粉末にしたもの)に水と砂を加えて作られます。
ただし、このようなセメントだけのブロックではそこまで頑丈にならないため、多くのケースでは、「セメントに他の材料を追加することで強度を高める」という方法が取られてきました。
しかし今回研究チームは、このようなセメント系の建材に、何か別の材料を追加するのではなく、その構造を工夫することで強化したいと考えました。
具体的には、人間の骨の「皮質骨」に見られる構造を模倣することで、亀裂に強くしたのです。
新しく開発されたセメント系の建材は、その内側に皮質骨に見られるような楕円状の空洞がいくつも存在します。
一見、空洞が複数生まれた分、従来のブロックよりも脆くなっているように感じるかもしれません。
ところが、この無数の楕円形の空洞は衝撃が加わった際に発生する「亀裂」を逸らし、その進展を遅延させながら、衝撃エネルギーを分散させます。
結果として亀裂の進展が抑制され、一度に壊れてしまうのを防いでくれるのです。