そうなると選択肢は新興国になる。「セキュリティや生活の快適性はお金で買うもの」という概念を考えると、日本の東京レベルの快適で安全な生活を送るとなると結局、日本に住むのとそこまで変わらなくなる。加えて、「日本は税金が高い」という話も無税や税金が安い国はセキュリティやインフラの整備に問題があるので、プラスアルファの出費につながる。それなら最初から日本に住む方が安上がりだろう。

ひところ流行った「バンコクなら月額5万円で生活ができる」みたいな話だが、現実的にはバンコクではなく田舎にいって相当切り詰めなければ難しいという意見も多い。

自分が思うにすでに日本で十分安く生活ができる。自分は日本の田舎で生活をしているので肌感覚でわかるのだが、田舎へ行けば割安の生活は簡単である。築古を許容できれば、月2万円台のRCマンションなんていくらでもあるし、移動は自転車とバスを使い、自炊すれば5万円以内に抑えられる。それでいて治安は世界トップクラスで水道の水もきれいでインフラも整っている。しかも労働にビザも要らない。リモートワークできるならそれで十分だろう。わざわざ海外へいってまで生活をする経済的合理性が見当たらない。

食事

もしかしたらこれが海外移住に及び腰になる一番の理由かもしれない。それは食事である。以下は完全に個人的な嗜好の話でまったく一般化できないが、かといって完全に無視できるほど小さい話でもない。

「食事ごときで何をいう」という反応があるかもしれないが、食事は想像以上に大きい。特に自分のように「毎日一番の楽しみが食事タイム」という人間にとっては、日本の食材で作られた日本食を食べられなくなるというのは甚大なるダメージである。

また、自炊だけでなく東京へ行けば世界最高峰のレストランが集積している。この価値はお金で買うことはできない。海外旅行をして知名度の高いレストランや高級店も食べ歩いてみたが、生粋の日本人である自分には日本で食べられるよりおいしい食事ができる場所を見つけることはできなかった。