■100年前の「震災時の秘話」に驚き
今回、取材に応じてくれたのは、タイガー魔法瓶株式会社の「魔法のかまどごはん」プロジェクトリーダー・村田勝則さん。燃料に使えるものが多数ある中、新聞紙を選んだ理由を聞いた。
村田さんは、「新聞紙は比較的簡単に手に入ります。キャンプ場で薪を買うと少々値段が張りますが、新聞紙であれば燃料代を気にしなくていいです。また、炊飯時に火力を調節できるのも大きいです。薪は木の種類や太さによって燃え方に違いがあり、火力をコントロールするのが難しいです。新聞紙は一度燃やすと一定の火力になるので、美味しく炊けるのではないかと考えました」と説明する。
同社では、社内で新たな事業を始める「シャイニング制度」がある。村田さんは2021年この制度に応募し、審査を経て開発に携わることになった。
試行錯誤の末、「魔法のかまどごはん」は2023年に世に出たが、くしくもこの年は1923年の関東大震災から100年という節目の年だった。
じつは、関東大震災の際、同社には「秘話」があるという。村田さんからは、「震災当時、ガラスの魔法瓶が棚から落ちた際、他社様の製品が割れてしまった中、弊社の魔法瓶だけ1本も割れなかったという逸話があります。関東大震災から100年というタイミングで、震災に寄り添った商品が出せるのは、一つの価値になると思いました」という回答が寄せられている。
100年前の「震災秘話」は開発時のモチベーションにつながったことだろう。