この実験を何度か繰り返した後、参加者はそれぞれの主張がどの程度真実であると思うかを評価しました。

それと並行して、参加者自身が気候変動を支持している派か、懐疑している派かも調べられています。

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Credit: canva

その結果、気候変動を支持している参加者は一貫して、気候変動が実際に起こっていると主張する発言を正しいと評価し、それに反する懐疑的な主張は真実性が低いと評価していました。

ところが実験を繰り返す中で、気候変動に懐疑的な発言に何度もさらされた参加者は、気候変動に対して科学的に正しい認識を持っているにも関わらず、自分の信念に反対する意見を信じやすくなっていたのです。

さらに興味深いことに、これと同じ現象は逆の立場でも起こっていました。

つまり、普段は気候変動に懐疑的な参加者も、気候変動を支持する発言を何度も読んでいると、その主張が正しいらしいと評価し始めたのです。

これは「真実性の錯覚」が気候変動という実際的なテーマにおいても起こり得ることを証明するものでした。

研究主任のノアバート・シュワルツ(Norbert Schwarz)氏は「参加者が事前に信じている立場が違っていても『真実性の錯覚』が同じように起こることには驚きました」と指摘。

「気候変動を信じている人も信じていない人も、自分とは反対の意見に繰り返しさらされることで、その発言を信じるようになっていたのです」と話します。

では「真実性の錯覚」はどのようなメカニズムで起こるのでしょうか?

「真実性の錯覚」が起きるメカニズムとは?

研究者によると、「真実性の錯覚」が起こるメカニズムには、情報の「処理流暢性(processing fluency)」が大きく関わっていると話します。

処理流暢性とは、ある情報が脳内で処理される際のスピードや容易さを示します。

脳内での処理が簡単な情報ほど、そうでない情報に比べて理解されやすく、記憶もされやすいので、私たちの脳はその情報を「親しみやすい」「正しい」と感じやすくなるのです。