ところで、米空軍は2021年7月23日、新しい「バンカーバスター」の「GBU- 72 Advanced 5K Penetrator」のテストを実施し、成功している。バンカーバスターGBU-72は5000ポンドの爆発力でGBU-28の2倍のパワーを有している。GBU-72は戦闘機または重爆撃機によって運ばれるように設計されている。

欧米の軍事情報機関筋によると、イスラエル軍はバンカーバスター爆弾GBU-28では山の奥深くに埋もれているイランのフォルドウ核施設を貫通する能力はないことから、米国から「バンカーバスター(GBU-72)」を購入した、といわれている。イスラエル側は今回、イランが核兵器を製造する前にGBU-72でイランの核関連施設を完全に破壊する可能性が出てきたのだ(「イラン核関連施設破壊の『Xデー』」2024年4月18日参考)。

ロイター通信は先月28日、ハメネイ師がナスララ師の死を受け、急遽安全な場所に移動したと報じていたが、イスラエル軍は7月31日、「ハマス」の最高指導者イスマイル・ハニヤ氏を訪問中のイランのテヘランで殺害している。イスラエル側はイランの要人の動き、潜伏先を掌握している。ということは、ハメネイ師が首都テヘランから移動して潜伏したとしても安全とはいえないだろう。イスラエル側はいつでもイランの要人を暗殺でき、その核関連施設を完全に粉砕できる状況にあるとみて間違いないだろう。

「地域問題の根本原因は米欧にある」と演説するイラン最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師 IRNA通信より

シーア派の盟主を誇るイランは国のメンツが重要だ。イスラエル軍と戦うハマスやヒズボラへ何も軍事援助をしなければ、彼らからの信頼を失うことにもなる。イランは今年4月、イスラエル空軍が在シリア・イラン大使館を空爆し、イラン革命防衛隊司令官らが殺害されたことへの報復としてイスラエルに向かって数百発のミサイルや無人爆撃機を飛ばしたが、その直後、「これで報復攻撃を終える」と表明している。希望的観測だが、イラン側は今回も軍事衝突のエスカレーションを避けるかもしれない。