正式に診断されていない人も含め、境界性パーソナリティ障害を患っている人は人口の2%ほど存在すると考えられており、自分の家族や友人がこれに該当すると感じている人も少なくありません。

この障害を持つ人は、家族や友人、職場の人など、自分と親しい人に対して、「自分は見捨てられてしまうかもしれない」と強く感じる傾向があります。

そのため、親しい人からの連絡が少しでも遅れたり、約束をキャンセルされたりすると、パニック状態に陥り、激怒します。

感情をコントロールできず、返事が来るまで何度も連絡したり、相手に怒りをぶつけて攻め続けたり、破壊行為・自傷行為に走ったりします。

では、境界性パーソナリティ障害の人は、どうしてこれほどまでに不安を抱えやすく、過剰に反応してしまうのでしょうか。

これまでの研究により、これらの症状の原因は、自分と他人の視点を正確に区別できないことから生じていると考えられています。

しかし、この認知的な混乱を測定することは困難でした。

そこで今回、クァク氏ら研究チームは、近赤外光により脳の血流の変化を測定する「fNIRS」を用いて、境界性パーソナリティ障害の患者の脳活動を測定し、どのような特徴があるのか調べることにしました。

境界性パーソナリティ障害は自分と他人の視点を混同する

研究には、19~36歳(平均23歳)の156人の若者が参加しました。

参加者の約29%は精神科治療を受けた経験があり、少数の人は現在進行形で薬を服用したり治療を受けたりしていました。

そして研究チームは、自己像(自分が自分をどう思うか。自他の境界とも関係している)の不安定性などに焦点を当て、それらに関連した質問票を用いて、境界性パーソナリティ障害の特性を測定しました。

また、参加者たちには自分や他人を評価する様々なタスクを行ってもらい、その間の脳活動が記録されました。

ちなみに、これら評価の対象となった「他人」の中には、「親しい人々」や「特に親しいとは感じていない知人」などが含まれていました。

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境界性パーソナリティ障害では、脳が「自分から見た自分」と「他人から見た自分」を混同している / Credit:Canva,ナゾロジー編集