ダイナミックさと優雅さを兼ね備える「プロサングエ」のデザイン

フェラーリ初の4ドア4シーターである「プロサングエ」は、パッと見ただけでも存在感たっぷりでボリュームのあるフェンダーが前方からサイドラインに沿ってなだらかに後方まで続いていて、1600mmに迫ろうとする全高がこれまでには無いフェラーリであることを主張していますが、特に試乗車はボディカラーがフェラーリを代表する真紅のROSSO PORTOFINO(ロッソ・ポルトフィーノ)であったことも影響して、エンブレムが無くてもすぐにフェラーリであることが一目でわかる、エアロダイナミクスを突き詰めた結果から生まれたと思える滑らかで抑揚のあるデザインをしています。
実際のところエアロダイナミクスは入念に考慮されていて、ボディワーク全体、アンダーボディからリアディフューザーに至るまで徹底的に追求され、さらにフロントバンパーとホイールアーチトリムの相乗効果で空気のカーテンを作り出しフロントのタイヤを空力的に密閉して横に広がる乱気流を防止するといった空気力学的に合理性のあるデザインも実現しているそうです。

フェラーリの新しい提案、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」の凄さとは?【自動車業界の研究】
プロサングエ(フロント斜め)(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)
フェラーリの新しい提案、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」の凄さとは?【自動車業界の研究】
プロサングエ(フロント)(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)
フェラーリの新しい提案、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」の凄さとは?【自動車業界の研究】
プロサングエ(サイド)(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)
フェラーリの新しい提案、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」の凄さとは?【自動車業界の研究】
プロサングエ(リア)(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)

ラゲッジスペースはボディサイズや全高の高さもあって、フェラーリ史上最大と言われる容量は473Lと十分に広く、リアシートを倒すことでさらにスペースを拡大できるところも他のフェラーリモデルとは異なる「プロサングエ」ならではの魅力だと感じます。

もちろんボディやシャシーはフェラーリのモデルとして抜かりなく、新設計された高強度のアルミ合金製ボディは部分的に高強度スチールも使用されていて、ねじり剛性で30%、ビーム剛性で25%ほど従来の4シーターモデルである「GTC4ルッソ」比で向上、これらによってNVH〔Noise(ノイズ)、Vibration(バイブレーション)、Harshness(ハーシュネス)〕特性も向上させていて、さらにルーフはカーボン製のためアルミ製と比較して20%ほどの軽量化も施され低重心化にも寄与しています。

フェラーリの新しい提案、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」の凄さとは?【自動車業界の研究】
プロサングエ(ラゲッジスペース)(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)
フェラーリの新しい提案、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」の凄さとは?【自動車業界の研究】
Body&Chassis〔Ferrari〕(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)

最新技術を駆使する「プロサングエ」のアクティブ・サスペンション

フェラーリが「プロサングエ」専用に開発した最新のアクティブ・サスペンションは自動車用ダンパー等で実績のあるカナダのマルチマティック社製のTASV(True Active Spool Valve)システムを採用、世界初の技術として4輪全てにおいて各輪のアクティブ・サスペンション・ダンパーを互いに独立して可動させるためのモーターが搭載されていて、3つの特許も取得しています。

フェラーリの新しい提案、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」の凄さとは?【自動車業界の研究】
Active suspension 4 wheel〔Ferrari〕(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)

フェラーリでGTカーのシャシー・エンジニアリング部門を率いるアルフレッド・スキフォ氏は「この10年間を振り返ってみて、今回、開発した技術はフェラーリがシャシー・エンジニアリングの面で達成した最大の技術的飛躍と言えるでしょう」と話しています。
具体的には「プロサングエ」のアクティブ・サスペンションにはダンパーへの入力とは別にダンパー内部にモーター・コントロール・モジュールが搭載されて可動することができ(特許取得)、構造としては各輪のダンパー・ユニットにスマート・アクチュエーターが搭載され、それぞれダンパー・ロッドにリンクした電圧48Vの“eモーター”が作動、独立制御されるのですが、これらを実現するにはボディ加速度センサー、ホイール加速度センサー、ホイール・ポジション・センサー、6次元ヨーレート・センサーといった高精度センシング機能の技術が必要不可欠です。

また制御ソフトウェアの開発を担当したビークル・ダイナミクス担当エンジニアであるフランチェスカ・ミンチグルッチ氏は「私たちは制御ロジックのソフトウェアについても2つの特許を取得していて、無段階の調整を可能にすることで各輪を完全に制御して適切な位置にポジショニングすることができるようになりました」と話しています。

さらにアルフレッド・スキフォ氏は、フェラーリにとって新しいチャレンジである悪路走破性を高めるため、でこぼこした路面で数多くの耐久性テストを実施した際のエピソードとして「プラスチック製のドリンク・カップをルーフの上にいくつか置いてみると、アクティブ・サスペンションの搭載車はボディ・モーション制御によってカップがそのままの状態を保ちますが、そのシステムをオフにしたらカップは屋根から落ちてしまいました」とのことで、また「“eモーター”がゼロからの開発であったうえに各輪に最大6000Nもの力を支えられるコンパクトなユニットに仕上げることが必要とされたため、多大な苦労を強いることとなりました」と開発時のポイントも挙げていて、続けて「この高度なシステムは専用のバッテリーを備えているだけでなく、小型ラジエーターとつながる2つのポンプ(各アクスルに1つずつ装備)を使用して冷却も行います」と説明しています。

「プロサングエ」のためのこれらの開発はフェラーリにとって、これまでには無いチャレンジングな取り組みであったため、実現した時の技術陣の達成感は格別なものであったのではないでしょうか。

フェラーリの新しい提案、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」の凄さとは?【自動車業界の研究】
Active suspension system〔Ferrari〕(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)
フェラーリの新しい提案、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」の凄さとは?【自動車業界の研究】
Roll Stiffness Distribution〔Ferrari〕(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)
フェラーリの新しい提案、初の4ドア4シーターモデル「プロサングエ」の凄さとは?【自動車業界の研究】
Active suspension〔Ferrari〕(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)