要するには、アムステダムの場合、聖母マリアからのメッセージの中に「共贖者マリア」、「共同贖罪者」(ラテン語:Co-Redemptrix)という内容が含まれていたからだ。カトリック教会のマリア神学で、贖罪の過程における聖母マリアへの称号だが、「仲介者マリア」(Mediatrix)とは明らかに異なっている。

「共贖者マリア」の概念は、聖母マリアの贖いにおける間接的だが重要な役割について述べている。聖母マリアはキリストのいのちを分かち合い、十字架の下で共に苦しみ、人類の贖罪のための犠牲として自身を捧げたということだ。

「共同贖者マリア」という称号については、カトリック教会内でも議論があり、正式には教義化されていない。教会はマリアの重要性を強調するが、「共同贖者」という表現は誤解を招く可能性があるからだ。その点、「仲介者マリア」は、より一般的に受け入れられている概念だ。

ちなみに、カトリック教会には聖母マリアに関連した祝日は2回ある。8月15日の「聖母マリアの被昇天」と12月8日の「聖母マリアの無原罪の御宿り」の日だ。いずれもイエスの母マリアの神聖化した日だ。12月8日のマリア「無原罪出産」の場合、イエスは罪なき神の子として降臨した。アダムとエバが犯した原罪からは影響を受けていない。しかし、イエスが無原罪だったから、その母親マリアもきっと罪なき人間として生まれてきたはずだ、という発想から1854年、聖母マリアの「無原罪の御宿り」という信仰箇条が決められた。聖母マリアを“第2のキリスト”といった聖母マリア信仰が生まれてくる背景となっている。

聖書では、「神と人間との間の仲保者もただ1人であって、それはキリスト・イエスである」(テモテへの第1の手紙第2章5節)と記されている。聖母マリアを救い主イエスと同列視する教義は明らかに聖書の内容と一致しない。アムステルダムに出現した聖母マリアが「共贖者」としての立場を主張していたことから、教理省が聖母マリアの出現とメッセージを承認しなかったのだろう(「『聖母マリア』神聖化の隠された理由」2015年8月17日参考)。