が、実は、その目線を意識したはずの「国民」と「党員」とは、実は意識が大分違っていたということが選挙戦を通じてはっきりしてきた。つまり、高齢で男性の多い保守的な自民「党員」たちは、あまり小泉氏や小林氏、ということにはならなかったのである。

報道に出ている話の鵜吞みではあるが、伝え聞くところでは日本会議のような保守勢力、また、石丸陣営をサポートしていた維新系の勢力などが、自民党の「党員」に響くようにと、それぞれ旧来的ドブ板戦、ネット版ドブ板戦を展開した結果、高市氏にかなりの支持が集まるようになったと言われている。

一昔前であれば、しっかりした思想信条に基づく国会議員たちは、党員たちの傾向を無視はしないまでも、それ以上に自分の考えに基づいて投票していたものが、最近の国会議員たちは、地元の議員や支持者たちの傾向を、以前にも増して無視できないようになってきている。しかも先述のとおり、支持者たちが高齢化していることから、一層「力」を有していることもあり、より一層、「党員」の傾向の影響を受けるようになっている。

そんな背景から、地域(都市部中心とされる)における高市票の伸びがあり、それを横目に見ていた態度未定の国会議員たちも、本来であれば、小泉氏や小林氏に入れそうなものであるが、最後、特に高市氏に入れ、また、一部は、元々地域での票が盤石な石破氏に流れたように思われる。

3. 自民党員になろう!

以上、今回の自民党総裁選を通じて、如何に総裁選における党員票の影響が強まっているか、そして、それは、良くも悪くも、「国民」全体の意識や傾向と実は乖離があるのではないか、ということを述べて来た。

これは、悲観的に見れば、日本は本当に議院内閣制なのか、ということにもなる。建前では、わが国の制度上、総理を選ぶのは国会議員である。国会議員の多数決で総理は選出されることになっている。

しかるに、今回の経緯を見るまでもなく、総理は実質的には、自民党総裁選で決まるものであり、そしてその総裁選では、上述のとおり、自民党員の存在感が強まっている。しかも、その党員は、必ずしも「民意」の傾向を如実に代表しているわけではないというのも、見て来たとおりである。