これまで、本稿含め、政局推移の大きなシナリオとしては、色々なところで、以下のストーリーについて書いたり述べたりしてきた。すなわち、

① 年末解散その他、解散時期についてずっと議論されているが、広島サミット後のチャンスを逃した岸田さんは結局解散出来ない。次期総裁選には不出馬となる(昨年秋頃からずっと予想)

② 岸田氏の任期切れ・不出馬に伴って新総裁が選ばれた暁には、次の総裁はその直後に衆院を解散(半年前から予想)

③ 総裁選には有力候補として、清新で政策通の小林鷹之氏が浮上してくる(春頃から予想)

という流れである。

ほぼ1年にわたって、こうしたシナリオ・事象を当てて来たので、その流れで自信を持って、「総裁選は決選投票となり、決勝戦では、小泉 vs. 石破となる。もしかすると小林が急浮上するかもしれないが、恐らくこの2人で決選投票。そして多分、最後は小泉が勝つ」という予想を、岸田氏の不出馬が決まった際、約1か月前には立てていた。

それが、まさかの事態だ。小泉進次郎氏がここまで失速し、小林鷹之氏があまり浮上せず、逆に高市氏がこれだけ急浮上してくるとは思っていなかった。

今回の総裁選を巡っては、個別の候補者の悲喜こもごものゴシップ的話から、特に決選投票を巡っての結局は派閥の領袖の影響力まで、色々と興味深い話があるが、ここでは、特に高市氏急上昇の背景について考察し、総理・総裁選出における現状の課題や可能性について略述することとしたい。

まず言い訳からになるが、私の予想が外れた最大の要因は、高市氏の急上昇という要素である。ポイントを一言で言えば、党員票の動き・影響力が極めて大きかったということだ。裏を返して言えば、勝負の大勢は国会議員票にあると見るのがこれまでの常識であったので、私の予想は極めてセオリー通りのものであり、最近の事象を踏まえきれなかった、ということになる。

実際、国会議員票を最も取ったのは小泉氏で、最終盤に急浮上してきた高市氏を除けば、その次は石破氏→小林氏の順である。決勝戦が石破氏 vs. 小泉氏となり、もしかして小林票が上昇してそこに割って入るが、いずれにせよ、より国会議員票の意味が大きい決選投票においては、そこに強みがある小泉氏が勝つ、と見るのは極めてオーソドックスな見方・分析だったと思う。