石破茂・新自民党総裁の組閣に向けた閣僚・党三役の人選が済んできたようである。大きな特徴の一つが、防衛大臣経験者の多さだ。総理になる石破氏をはじめとして、5人の防衛大臣経験者が、要職に就く。

外務大臣に岩屋毅氏に加え、防衛大臣に再任の中谷元氏が内定したという。対外的な顔となる外務大臣と防衛大臣に二人の防衛大臣経験者をあてた。さらに自民党内きっての防衛通で知られる小野寺五典氏が政務調整会長に内定した。防衛関係の案件を党側で推進してもらう意気込みだろう。また、官房長官留任の林芳正氏も防衛大臣経験者である。

官邸(総理―官房長官)、外務省、防衛省、自民党の要職に、防衛大臣経験者をあてた形だ。これで防衛関係の案件の推進に関心がなかったら、不思議だろう。

石破茂氏インスタグラムより

石破氏は、憲法9条2項削除論者として知られる。自衛隊の実態が軍隊であるのに「戦力不保持」を定めている憲法の条項があるのはおかしい、という主張である。

この点に関しては、私自身には、一連の著作がある。憲法起草者であるGHQを含めて連合国が使用していた「戦力(war potential)」概念は、違法行為である「戦争(war)」の潜在力という意味で用いられていたものなので、「軍隊」一般を指していない、ということを、私は数冊の著作で主張している。自民党の憲法改正推進本部などに招いていただいて講演したことも、複数回ある。石破氏は、必ず最初に手を挙げて、長い質問をしてくださった方である。

正直、石破氏の世界観は、憲法学通説の教科書によって強固に形作られている、という印象が強い。憲法改正論者の中にも、世界観そのものは憲法学通説によって確立されており、ただ結論として「だから改正したい」という主張だけをする方は、日本に多数存在する。これらの方々に、国際法に依拠した国際社会で理解される概念構成や用語の説明をしても、全く受け付けてくれない。